人口減少をチャンスに変えるアイデア地方企業  (先見経済・2014年9月号
現代社会研究所所長・青森大学名誉教授  古田隆彦
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RESEARCH INSTITUTE FOR CONTEMPORARY SOCIETY

◆人口減少・3つの変化


 日本の本の人口は2009年から減り始め、2050年には一億人を割り、世紀末には4~6千万人にまで落ち込む。人口減少が進めば、日本の社会・経済にさまざまな変化が起こる。その中でも、今後の生活市場にとりわけ重大な影響をもたらすのは。次の3つの現象だ。

第一は地域人口の急減。都道府県の人口は、すでに8割強の地域で減少が進んでいる。25年ころになると、東京都、大阪府、愛知県、神奈川県、埼玉県、滋賀県でも減少が始まるから、全てのエリアが人口減少地域になる(国立社会保障・人口問題研究所・13年3月推計)。

第二は年齢構成の上昇。「少産化」による若年層の縮小と「長寿化」による高齢層の増加で、若年人口(0~14歳)は10年の13・1%から50年の9・7%へ低下し、高齢人口(65歳以上)は10年の23・0%から50年の38・8%へ急上昇する。その結果、平均年齢も10年の45・0歳から50年の53・4歳へと、大きくシフトする(前記・中位推計)。

第三は家族構造の激変。総人口減少と年齢構成上昇の影響を受けて、家族の数は10年の5184万世帯から19年の5306万世帯までは増えるが、そのあたりがピークで、以後は減っていく。一世帯当たりの規模も10年の2・42人から20年の2・25人を経て、35年には2・20人へ縮小する(国立社会保障・人口問題研究所・13年1月推計)。

3つの現象は、生活市場に対して、一方ではマイナスの影響を与えるが、他方ではプラスのインパクトをもたらす。

◆3つのマイナス〝三縮化〟

3つの変化は、量的にいえば、間違いなく縮小現象であるから、地域市場にも当然マイナスの影響をもたらす。

①地域人口の減少は、それに比例して衣食住など、最も基本的な生活財の需要を減らし、必需品市場を縮小させる。つまり「必需縮小化」というトレンドを引き起こす。

②年齢構成の上昇は、若年層の減少と高年層の拡大を招くから、生活市場でも年齢の若い層が急速に縮む「若年縮小化」を進行させる。

③家族構造の激変で、家族の数と世帯の規模の、両方がともに縮小する「家族縮小化」が進んでいく。

3つのトレンドは、従来の人口増加社会、あるいは成長・拡大型市場からみれば、いずれもマイナス現象だ。しかし、どれもが避けられないものである以上、むしろ大きく視点を変えて、これらのすべてを、新たな生活需要や社会的ニーズの拡大とみなしたらどうか。つまり、これからの企業には、マイナス現象に積極的に対応して、新たな商品やサービスを大胆に開発することが求められるのだ。

◆3つのプラス〝三超化〟

一方、3つの変化を質的にみれば、従来のトレンドを覆して、新たな生活需要を生み出す可能性を秘めている。その意味では、生活市場にプラスの影響をもたらす。

地域人口の減少で経済・社会の基本的な方向が、従来の成長・拡大型社会が作り出した、さまざまな蓄積を、減っていく人間で巧みに利用する構造へと移行する。生活面でも、ひたすら成長・拡大を焦る生活心理が次第に縮小し、与えられた生活環境を巧みに活用して、自分なりの暮らしを実現する、「知足・自足型」の生活者が増える。そうなると、生活市場においても、これまでの日常生活を超えた「超日常化」というべきトレンドが生まれてくる。

年齢構成の上昇は、年齢区分を次第に上昇させ、人生の仕切り方もまた大きく変える。これまでは平均寿命が70歳前後であった、1960年ころの人生観に基づいて、幼年・少年・青年・中年・老年の年齢区分を決めていた。しかし、今後は「人生85~90歳」を前提に、幼年、青年、中年、老年などの開始・終了時代をそれぞれ見直して、各時期をゆっくりと生きる「超年齢化」へと移行していく。

家族形態の変化では、単身者、夫婦のみ、単親が増え、核家族や多世代家族が減っていく。さらに細かくみると、同棲、事実婚、別居婚なども増えるし、単身者がマンションの一室や一軒の家で共同生活する「ルームシェア」や「ハウスシェア」、高齢者が一緒に住む「グループホーム」、複数の家族や元気な高齢単身者が共同で暮らす「コレクティブハウス」といった、非血縁的な同居世帯も拡大する。従来の家族を超えた新家族、いわば「超家族化」ともいうべきトレンドの進行だ。

以上のように、人口変動の質的なインパクトは、超日常化、超年齢化、超家族化という、3つのトレンド、つまり「三超化」を生み出す。これらの需要を的確にとらえると、生活産業に関わる、多くの企業には絶好のチャンスが訪れる。

◆新たな必需品と選択品を創れ!

「三縮化」というマイナス現象と、「三超化」というプラス現象。地方の企業がこれらのインパクトを柔軟にキャッチするには、マーケティングの視点と戦略を、基本から見直していくことが必要だろう。

一つは新しい必需品の開発。人口減少が消費市場に与える、最大の影響は、減少に比例して日常=必需品の需要が落ちることだ。これを克服するには、三縮化と三超化に見合った、新たな必需品を開発して、日常市場を維持することが求められる。

新たな必需品を生み出す、最も基本的な戦略は、いわゆる「差別化」戦略だ。商品やサービスの機能・性能・品質などの面で、利便性や有用性の差を作りだし、新たな需要を喚起していくものだ。

しかし、差別化の対象を機能・性能・品質に限ってはならない。価格、使用頻度、対象ユーザー、販売方法、顧客対応などの面でも、新たな優位性を発揮することが求められる。

価格面でいえば、低額化・定額化・高額化など戦略を多面化する。使用頻度では複数化やリピート化を追求する。対象ユーザーでは従来からの顧客層を見直し、異なる層を開拓する。販売方法でも一人の客から従来とは異なる需要を探し出す。そして顧客対応では一人の客と商品の接触ルートを複数に増やす・・・といった戦略によって、日常的、必需的な新商品を開発し、売り上げを維持していく(事例1、2、3参照)。

もう一つは新たな選択品の創出。人口減少や年齢・家族構成の変化で、新たな選択需要が生まれてくるから、産業側も的確に対応しなければならない。従来の差別化を超えた、幾つかの戦略が必要になる(事例1,4参照)。

①差異化・・・商品の機能や品質の上に、カラー、デザイン、ネーミングなど言語的、社会的な意味づけを行う。

②差元化・・・言葉やデザインの対極で、体感、伝統、神話など、伝統的、根源的なイメージを商品に付加する。

③差汎化・・・社会構造や生活態様の変化に応えて、人口減少時代に見合ったライフスタイルや流行を提供する。

④差延化・・・流行やトレンドの対極で、他人がどう思おうと自分だけの満足を強く求める、こだわり派の生活者に対し、きめ細かく対応する。

⑤差真化・・・自らが定めた目的をめざして、厳しく自己を統制しようとする生活者に対し、学習、訓練、儀式性などを付加する。

⑥差戯化・・・日常生活を一時緩め、非日常的な世界に戯れようとする生活者に対して、ゲーム、遊び、模擬体験などを提供する。

こうした戦略で、人口は減るものの、その分濃厚になる生活願望に向けて、新しい商品やサービスを創出できれば、生活市場はまだまだ充実できる。人口減少というマイナス現象をプラスに変える、最大のメリットは、マーケティングの原点回帰を再確認することにある、ともいえよう。

◆人口減少地域こそ先進地

人口減少地域というと、後進地とみなされがちだが、大きな誤解だ。25年以降は全ての県で人口が減る以上、むしろ先進地と考えるべきではないか。

何が先進地なのか。一つは人口減少から発生する、さまざまな地域需要に真っ先に対応を迫られること。もう一つは人口減少のデメリットをメリットに変える、絶好のチャンスに恵まれること、の二つだ。

この利点を活かすため、人口の減る地域の企業には、地域密着という特性を活かして、新たな生活需要や心理需要をきめ細かく汲み上げ、人口増加時代とは異なるビジネスを創出することが期待される。

それには、ソーシャルメディアなどへの発信力を向上させるとともに、カラー、デザイン、ネーミング、ブランド、ストーリーなどの差異化能力や、差延化、差元化、差真化、差戯化などの創造力もまた、次々に開発させることが求められる。

 これらの戦略に成功した時、地方発の新商品やニュービジネスは、全国はもとより、やがては人口減少が始まるアジア各地へと、大きく羽ばたいていくだろう。

トイレットペーパーに付加価値を!  林製紙㈱

 
 人口が減れば、トイレットペーパーの需要も落ちる。需要が落ちれば、価格も落ち、スーパーやドラッグストアでは、1ロール30円前後で売られている。こうした市場環境にもかかわらず、さまざまな付加価値戦略によって、売り上げを維持している会社がある。静岡県富士市の林製紙㈱だ。

同社の林浩之社長(52歳)は、マーケティング手法の最先端を経営に応用し、従来のトイレットペーパーの枠にとらわれないユニークな商品展開で、厳しい状況を克服している。

機能や品質を更新する「差別化」戦略では、2007年に「メジャー付きトイレットペーパー」を発売。メタボ対象者がトイレットペーパーで自分の腹まわりを採寸できる。トイレの中で簡単に測れるうえ、内蔵脂肪の燃焼に役立つエクササイズ方法などもプリントされている。一ロール120円(税別、以下同じ)。

カラーやデザインなどを変える「差異化」戦略では、08年に「黒紙トイレットロール」を発売。黒の染色は手間も費用もかかるため、同業他社から調達したペーパーで製造し、一ロール200円で売っている。

さらに差異化を進めたストーリー戦略では、09年6月にトイレットペーパー「鈴木光司のトイレで読む体感ホラー ドロップ」を発売。ホラー小説「リング」シリーズで有名な作家の作品をプリントしたもので、おどろおどろしいパッケージが注目を浴びたうえ、トイレ内で短時間に読めるように工夫した。1ロール200円で、インターネット、大手雑貨店、書店などで発売したところ、09~10年に30万巻を超えるヒットとなった。12年からは英語版も海外で販売されている。

一方、贈答や幸運に対応する「差元化」戦略では、05年から「運のつくトイレットペーパー・シリーズ」を投入。招福招き猫(1ロール90円)、招福ダルマ(同)、開運招福・おみくじ付き(同)などだ。08年からは正月の縁起担ぎ用として毎年の干支をデザインした商品も販売。1ロール90円で、14年の「午」バージョンは28万個以上を売り上げた。

さらに学習やトレーニングを誘う「差真化」戦略では、09年に「おもしろトイレット 英語編」を1ロール120円で発売。英語に関心のあるユーザーや受験生に向けて、トイレの中でも勉強ができるという逸品。同年に発売した「しりべんトイレット健康編」は、アロマテラピー、足つぼ、体力年齢チェック、飲む健康法、水分補給、トイレマッサージ、うんちチェックなど、健康をテーマとした情報をプリントしたもので、1ロール120円。

多彩な商品戦略を有効に展開するため、同社では、インターネットやマスコミを徹底的に利用する。ネット販売は、大手のサイトが始まる10年以上前から開始しており、昨今では新販路を開拓する、最も重要なツールとなっている。マスコミへの情報発信も、中小企業ゆえにとりわけ重要と考えて、新商品発売の度に斬新なプレスリリースを送付。新聞、テレビ、雑誌にも取り上げられて、新たな話題を提供している。

 新商品の開発と斬新な情報戦略によって、同社は縮む市場を見事に克服している。

学生社長が設立したシェアハウス   ひだまり株式会社


 単身者者の急増に伴って、マンションや一戸建住宅の、鍵のついた個室に住みながら、キッチン、トイレ、バスルーム、リビングなどを共用する居住形態、〝シェアハウス〟が急増している。背景には、居住コストの経済性、共有の備品や設備の充実性、新たな人間関係の創出性などが重なっている。

全国の数は昨年8月末で2,744件、運営事業者は598 社にのぼる。このうち、三大都市圏が2,679件と97%を占める(日本シェアハウス・ゲストハウス連盟調べ)。最近では地方都市にも広がり始めており、北海道、東北、九州などでも、新たな事業者が登場している。その一つが熊本市のHidamari(ひだまり)株式会社。

同社は2012年2月、熊本大学大学院生の林田直大さん(現在27歳)が設立した会社。世界30か国を旅行した林田さんは、さまざまな共同宿泊施設やシェアハウスを体験した結果、「家族のように温かく、笑い合える心地よい空間を作りたい」と考えるようになった。

半年間休学して、東京のシェアハウスでノウハウを学び、会社法や会計についても勉強した。そのうえで、同年2月、佐賀大学時代の友人中原琢さん(同25歳)を誘って、シェアハウス運営のための同社を設立。

中原さんもまた、ヒッチハイクで西日本を横断したり、東南アジアへ一人旅を経験した人。その後、休学して独学でweb制作・デザインの勉強を始めたところだった。

しかし、シェアハウスという業態が熊本には浸透していなかったため、不動産業者やオーナーにはすぐには理解してもらえず、物件探しに苦労した。50社約100軒を当たった結果、ようやく熊本市中央区のアパートに辿りつき、直ちに転用して、6月にシェアハウス「ひだまり」第一号を開業した。

コンセプトは、コミュニティ重視型のシェアハウス。居住者ひとりひとりの夢・想い・人生を交換し、学び、成長できる居場所・空間を熊本に提供する、というもの。

4室のうち、1室には林田さん(代表取締役)と中原さん(取締役)が同居、1室には熊本大生1人が、残りの2室にも社会人2名が入居してきた。敷金、礼金、仲介手数料は無料、水道・光熱費などを含む家賃は1か月3万円前後。洗濯機や調理器具、家具などは自由に使える。

その後、第一号は13年9月に撤退したが、新たな物件が増え、現在は熊本に3棟を展開している。12年夏には、シェアハウスひだまり『田迎』(5室、37,800~42,800円、水道・光熱費込み)。13年春には、シェアハウスひだまり『白川 アンダーザブリッジ』(6室、48,000~46,800円、同)。そして14年春には、シェアハウスひだまり『国府』(5室48,000~42,800円、同)の3物件だ。

開業わずか2年で、ひだまりは19才から44才まで、学生、社会人、さらには外国人や留学生と、多種多様な人間の集まる場所に育った。14年7月にはスマートフォン上でシェアハウスを掲載・探索できるMAHOLOVAも公開している。

今後は高齢者やシングルマザー向けシェアハウスにも挑戦したいと、同社の意欲はますます高まっている。

新方式の移動スーパーを開発!   (株)とくし丸


 農山漁村はもとより大都市の真ん中でも過疎化や高齢化が進み、買い物難民が急増している。

この対策として、斬新な移動スーパー方式を開発した会社がある。徳島市の㈱とくし丸だ。2012年2月に同社が始めた移動スーパー「とくし丸」は、軽トラックに商品を載せ、移動販売を行なうもの。どこにでもありそうだが、従来とはまったく違うビジネスモデルだ。

何が新しいのか。商品の供給元は地元スーパー、販売者は個人事業主、移動販売のプロデュースは同社と、三社がタッグを組んで運営することだ。

移動スーパーの最大の課題は収益性だ。従来の方式では、拠点店舗の近隣で車を走らせるから、経費がかさむ。だが、新方式では移動販売にかかる経費はすべて個人事業主が負担したうえで、その利潤を確保する。商品を供給するスーパーは、新たな需要をとらえて、売り上げを伸ばす。そして業績を上げるための、さまざまなサポートを同社が行なう。3者で役割と責任を分担することで、それぞれに大きなメリットが生まれる。

同社のサポートは綿密だ。移動販売のコース設定では、徒歩でニーズ調査を行なう。「1軒1軒話を聞いて、初めてわかることがある。近くにスーパーがあっても、重いものを運べない方もいる。居間から玄関先に出られない方、目が不自由で商品が見られない方までいろいろだ。今後もこうしたニーズをきめ細かくとらえることが必要だ」と同社の住友達也社長は語る。

それゆえ、これ以上の商品流通モデルはない、ともいう。なぜなら、競合するネットスーパーはクールすぎて、高齢者には向かない。カタログ宅配サービスも、注文してから届くまでに時間がかかる。食事の宅配もあるが、1カ月もすれば飽きる。スーパーまでの送迎サービスも、外出するための身支度などで気遣いが多い。

これに対し、玄関先まで「スーパー」を届ける「とくし丸」はビジネスとしての発展性が大きい。販売責任を持つ個人事業主と供給元のスーパーさえ適切にマッチングできれば、全国規模での展開も可能だ。個人事業主という起業家も増やせる(開業資金300万円)。将来的には大手スーパーとも業務提携し、移動スーパーの高度なノウハウを提供することもできる。

軽トラック2台でスタートした移動スーパーは、2カ年で急拡大し、徳島県内では現在、徳島市、阿南市、小松島市の3市などで計10台が運行。9月からは鳴門市でも1台が走る。

この成果が社会的にも評価されて、14年6月には、徳島県警から「安全安心特使丸」を委嘱された。高齢者との接点が多いことから、週2回の訪問販売時に、振り込め詐欺や交通事故への注意を促すチラシを配り、県警からの犯罪情報を伝えるサービスだ。「特使」の名称は同社の社名にちなんで設定された。

高齢化が進む中、同社の移動販売ビジネスに関心を寄せるスーパーや個人事業主は全国的に広がっている。県外でも舞鶴市(京都府)、高知市、新宿区(東京都)、福山市(広島県)、福島市(福島県)と、14年内に5カ所となった。

住友社長は「将来的には50社と提携し、全国で千台を走らせたい」と大きな目標を語っている。

キャバレー気分のデイサービス   (福)よいち福祉会


 七五歳以上の老年層でも、最近では元気な高齢者が多く、勉学や遊びに関係する選択財が伸びている。例えばシニア向けのIT教室、ゆとり旅行、シニア向けゲームセンター、子育て応援シニア遊戯教室といった施設やサービスだ。

その中でも、とりわけユニークな事例が、社会福祉法人よいち福祉会が運営するデイサービス「よいち銀座はくちょう」(北海道余市町)。廃業したキャバレーを500万円ほどかけ改装、2011年4月にオープンした。天井からはシャンデリアがぶら下がり、バーカウンターもダンスステージもそのまま残っている。

通信カラオケや音響設備も完備し、カラオケや懐かしのメロディーを楽しむこともできる。さらに季節に応じた各種イベントも企画されており、利用者はキャバレーとして営業していた当時の「大人の社交場」を追体験できる。

これでも、れっきとしたデイサービス施設であり、医師などの許可が下りれば、有料でビールや焼酎も出てくる。職員の大半がビアマイスターの資格を持つ徹底ぶりで、自宅にこもりがちな高年者を引っ張り出す施設をめざしている。

サービスの提供時間は14時30分~20時30分で、要介護の認定を受けている高齢者が利用できる。基本的なサービス内容としては、送迎サービス、健康チェック、身体状況に合わせた入浴サービス、適温適材による食事、多彩なゲームによるリハビリ、インターネットや映画鑑賞などのレクリエーションなど。

利用者は登録者30名のうち男性が18名を占める。日常生活から離れて楽しめる点が受けいれられて、やはり男性の利用者が多いようだ。

運営主体であるよいち福祉会は1990年に設立された社会福祉法人。北海道余市郡余市町の高齢者総合福祉施設フルーツ・シャトーよいちを中心に、高齢者福祉事業から児童福祉事業まで手広く運営している。

1991年に余市町で初の特別養護老人ホームを開設。その後、増床・改装を繰り返し、現在は1万8000㎡の敷地に特養118床の他、グループホーム、ショートステイ、デイサービスなど一大福祉ゾーンを形成している。

介護保険制度が始まった2000年以降は、新規事業を拡大。同年、高齢者在宅総合ケアセンターや特養内に居酒屋形式の喫茶スペースを設けた。03年には特養の寮母室や理容室などのスペースを改装してリビングを3カ所配置。04年、全室個室のユニット型特養30床や地域交流センターを増築。07年には居宅介護支援事業所、集会室、調理実習室を増築。

一方、外部施設の利用では、03年に休眠喫茶店を改装したデイサービス「ぷらっと・よいち」を開設。その経験を活かして、11年にキャバレーを改装したデイサービス「よいち銀座はくちょう」に至った。

この施設は、今後デイサービスの利用者の中心となる団塊の世代を対象に、休眠中の既存建物を再活用するという、ユニークな発想によって、地域社会の中で福祉の役割を見直させた。まさに〝介護から〝快護〟への大転換である。



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