◇人口容量は限界
日本の人口が2004年の1億2784万人をピークに減り始めた。政府やメディアはその理由を「少子高齢化」で説明し、人口減少を問題視する。が、この問題は「パラダイム(思考の枠組み)を転換する必要がある」と言う。
「いわゆる少子化対策を打って両親の負担を減らせば、人口が回復すると考えるのは誤解です。少子化対策はむしろ、人口を減少させます」。日本が今、突き当たっているのは歴史上「5回目の人口の壁」だと見る。
「人口減少社会を考えるときキャリングキャパシティ(環境許容量)、人間のばあいは人口容量の限界を考える必要があります」。環境許容量とは、<一定の環境の中に一種類の生物が生きられる限界がある>との考えに基づく。例えば古代のハエも現代のハエも、同じ容積のビンの中で生息できる個体数はほとんど変わらない。環境許容量に余裕があるうちは増え続ける。生息密度が上がってくると、生殖抑制などによってハエは個体数を調整する。
では日本に何人すめるのか。「人がほかの動物と違うところは、環境の利用法を変更しながら、自らキャリングキャパシティを変えてきたことです」
歴史をひもとけば、日本の人口容量には四つの壁があった。(1)旧石器時代の3万人(2)新石器時代は26万人(3)大陸から粗放農業文明が流入し700万人(10世紀ごろ)(4)水田稲作文明を高度化させた集約農業文明により3250万人(1730年ごろ)−−をそれぞれ上限とした。そして今は、科学技術を基礎にした加工貿易文明によって増えた人口容量が限界に達している。「人口減少の要因を少子高齢化や晩婚・非婚化だけに追い込まず、幅広く展望する見方を示したつもりです」 <文・若狭毅>
(幻冬舎新書・798円)
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