不動産関連論文・記事・・・『リアルパートナー』連載
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現代社会研究所  RESEARCH INSTITUTE FOR CONTEMPORARY SOCIETY
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人口減少時代の宅地建物取引業・第5回・5多化×6差化=多重戦略で逆転する
(現代社会研究所所長・古田隆彦)

多重戦略を展開する
 前々回は「営業5多化」戦略、前回は「新商品6差化」戦略を紹介してきたが、両者を掛け合わせると、さらに強力な多重戦略が浮かんでくる。代表的な戦略は、多層・多数化と差別・差延・差真化などを掛け合わせた3戦略、つまり①シングル世帯戦略、②スーパーファミリー戦略、③住替え促進戦略である。

シングル世帯戦略
 シングル(単身)世帯は若年層と高齢層の両方で増えており、どちらでも独居と共棲という、相反する住宅需要が広がっている。独居志向では、若年層が設備水準の高い住空間、アートや音楽などを気がねなく楽しめる住空間などを、また高齢層がリバースモーゲージやサービス付き高齢者向け住宅などを求めている。他方、共棲志向では、若年層がシェア住居型ゲストハウスを、高齢層がグループホームやコミュニティー性の強い住宅などへの需要を、それぞれ広げている。
 新たな需要に対応するには、新築や賃貸などの対象物件を拡大するとともに、管理・運営の諸契約や共生のためのノウハウなど、ソフト面への対応が急がれる。

スーパーファミリー戦略
 シングル世帯とともに、2人以上の家族世帯も多様化し、同棲、事実婚、別居婚、子連れ再婚などが増えている。あるいはシングル層のハウスやルームのシェアリング、複数の家族や高齢シングルが一緒に暮らすコレクティブハウスなど、従来の「家族」に代わる「スーパーファミリー(超家族)」も拡大している。
 これに対応するには、シェアリング向けの専用アパート・マンション・一戸建ての拡大に努めるとともに、契約方式や居住マニュアルも充実させ、新たな居住形態を広く社会へ認知させることが必要だろう。コレクティブハウスについても、新築物件の増加を支援し、生活作法・居住・契約条件など、ソフト面の整備に取り組むことが求められる。

住み替え促進戦略
 人口減少社会では、生き方や暮らし方が変り、住み方や住む場所も変わる。子どもの数が少ない両親は、その分大切に育てるから、よりよい育児・教育環境を求めて、次々と住み替える。他方、定年を超えた60~70歳代は、新たな人生を求めて、温暖地や帰農適地へ移住するが、80歳を過ぎれば、家族構成の変化や身体能力の低下を考えて、利便性の高い都心部などへ戻ってくる。
 子育て需要については、マンション業界が「子育て仕様マンション」を増やしているが、宅地建物取引業が本気で参加すれば、高齢層の所有する大・中規模の住宅を、子育て向きの広さを求める若い世帯に賃貸するという、新たなしくみを拡大させ、ミスマッチが解消できる。
 高齢層の住み替え需要についても、定年組や長寿層の所有する住宅を、賃貸や転売を仲介するNPO(非営利組織)や公的組織が増えているが、宅地建物取引業にとっても、農・山・漁村の空き家に手を入れて田舎暮らし志向の定年組に貸すサービスや、定年組・長寿層の所有する住宅の賃貸・転売仲介を増加させるなどの対応が急務だ。また都心と郊外のダブルハウジング志望者が増えることを考えると、大都市郊外の空き家住宅・マンションの利用を促進することが求められる。80歳以上の高齢層の都心回帰についても、住替え対策や代替賃貸など、新たなしくみを提案する必要があろう。

多面的な住生活提案業へ向かって
 3つの戦略に共通するのは「少産・長寿化」、つまり「少なく産まれた人々が長く生きる」社会への対応だ。平均寿命が80歳前後に延びたため、人生の区切りも大きく延びて、子ども時代は20代前半まで、青年も40代前半まで、中年も70代前半まで、老年は70代後半からというのが実態だ。これに伴って、就職や結婚は遅くなるし、退職や引退年齢も上る。当然、年齢別の住宅需要も様変わりし、賃貸・戸建需要はもとより、住み替えや老後需要も大きく上方へシフトする。
 激変する需要に対応するには、供給モデルもまた、1960~70年代にできた「人生70歳型」をいち早く脱し、「人生80~90歳型」に切り替えることが必要だ。長くなった人生にふさわしい住生活計画モデルを創造し、積極的にユーザーに提供していかなければならない。
今後の宅地建物取引業に求められるのは、「宅地や建物の仲介業」というアイデンティティー(存在意義)を超えて、「多面的な住生活提案業」へと転換していくことではないか。
(リアルパートナー・2012年1~2月号)

人口減少時代の宅地建物取引業・第4回・新商品・新サービスで市場を拡大する6差化戦略
(現代社会研究所所長・古田隆彦)

戦略アナロジーのすすめ
 人口減少、顧客減少という逆境に、宅地建物取引業が対応していくには「戦略アナロジー」、つまり他業界の成功事例を積極的に導入することが必要だ。さまざまな業界の成功事例を整理すると、営業力の改善で売り上げを維持する「新営業対策」と、新市場の創造で売り上げを拡大する「新商品対策」の2つが浮かび上がる。前者については先月号で解説したので、今回は後者を「6差化戦略」として考えてみよう。
 新商品対策には、物質的な違いを訴求する「差別化」、言葉や形で訴える「差異化」、顧客志向を徹底する「差延化」、五感や精神性を強調する「差元化」、学習やトレーニングを付加する「差真化」、遊びやゲームと連動する「差戯化」の、6つの戦略があり、それぞれには表に示した諸戦術がある(詳細は拙著『人口減少社会のマーケティング』参照)。これらを宅地建物取引業に応用すると、対象物件と仲介業務で、次のような方向が考えられる。

基本的な3戦略で市場を広げる
差別化・・・新たな機能・性能・品質で市場を広げる戦術を応用すると、物件では安心・安全強化物件やバリアフリー物件の増加、また仲介では安心・安全情報提供や緊急時保障条件の強化、常時クレーム処理対応や高齢者・単身者向け住宅助言・紹介の拡大、デジタル情報を超えるアナログ情報の提供などが必要になる。
差異化・・・カラー・デザイン・ブランドなど非物質的な戦術を応用して、物件では有名デザイナーズ物件やカラフル物件などの拡大、仲介では取引業店舗の駅前情報拠点化やクチコミ生活センター化、斬新なデザインやカラーの新店舗モデルなどが考えられる。
差延化・・・私仕様・参加・手作りなど顧客のカスタマイズ(特注)志向に対応する戦術を進めると、物件ではカスタマイズ可能賃貸、原状復帰不要賃貸、近隣開放型食堂付き賃貸物件、カスタマイズド・ログハウスなど、仲介では契約方式のカスタマイズ化、コミュニティー参加の推進、カーシェアリング&レンタサイクルサービスの付加など、顧客生活の自由度や創造性を広げる対策が考えられる。

革新的な3戦略で市場を変える
差元化・・・体感・象徴(無意識次元のイメージ)・神話性を強化する戦術を応用すると、物件では音・風・風土などで五感を刺激する住宅、スピリチュアリティー(精神性)を向上させるマンションなど、仲介では易・恵方など神話的条件の提供、風水的アドバイス、自分史・家族史の形成支援情報など、精神性の高い情報を提供することが有効だろう。
差真化・・・学習・訓練・儀式性などを付加する戦術を適用すると、物件ではスポーツジム付設物件、学習塾併設物件、保育園・幼稚園併設物件、芸術センター・美術館近隣物件などの拡大が、仲介では近隣における認可保育園の有無、公立学校・有名進学校通学圏の紹介、カルチャーセンターやスポーツクラブの利用可能性など、教育・訓練機関の情報提供を強化することが望まれる。
差戯化・・・ゲーム・遊び・模擬体験などを重ねる戦術を応用すると、物件では音楽スタジオタイプ物件、共有アトリエ付き物件、温泉・足湯付き物件、屋上菜園付き物件などの増加、仲介では公園・ゲームセンター・遊園地などの近隣情報の提供や、物件探しのゲーム化など、遊戯関連の情報やサービスを広げるという対応も考えられる。

新商品対策の6つの戦略

戦 略

戦       術

差別化

新機能化高性能化高品質化

差異化

カラー化デザイン化、ネーミング化、ブランド化ストーリー化

差延化

私仕様化参加化手作り化編集化、変換化

差元化

体感化象徴化神話化

差真化

学習、訓練化、修行化、儀式・作法化

差戯化

ゲーム化、遊戯、模擬体験


(リアルパートナー・2011年12月号)

人口減少時代の宅地建物取引業・第3回・顧客減少を跳ね返す2つの対策
(現代社会研究所所長・古田隆彦)

◆市場縮小を克服した成功事例

 人口が減れば顧客が減る。顧客が減れば、衣食住すべての市場で需要が減る。人口が停滞した1990年代以降、さまざまな産業ではすでに、顧客減少に対応すべく、幾つかの対応戦略が実施されてきた。
 こうした対応について、筆者は食品、衣料、家電、自動車から旅行代理業や冠婚葬祭業まで、20数業種約500社について、成功事例を研究してきた。それらを整理してみると、顧客減少による市場縮小を克服するには、大別して2つの対策が考えられる。
 1つは営業力の改善によって売り上げを維持する「新営業対策」であり、もう1つは新たな市場の創造によって売り上げを拡大する「新商品対策」である。前者は「現在の商品やサービスで売り上げを伸ばす」対策であり、後者は「新たな商品やサービスで新規の需要を開拓する」対策でもある。2つの対策を不動産業に適用するとどうなるのか、まずは新営業対策で考えてみよう。

◆売り上げを維持する5多化戦略
 新営業対策は5つの戦略で構成される。価格を上下に変えて拡販する「多額化」、複数販売やリピート化で増収を図る「多数化」、顧客の年齢・性別・国別を見直す「多層化」、業種・業態を拡大して増益を狙う「多面化」、顧客との接触機会を強化して売り上げを伸ばす「多接化」の5つの戦略だ。5つ「多」を実現するから「5多化」戦略といえるが、それぞれには図表に示したような、幾つかの戦術がある。これらを宅地建物取引業に応用すると、次のような方向が考えられる。

多額化・・・低額化では仲介料、更新料、修繕費、手数料などの見直し(例:広告費等の経費節減による仲介手数料の低額化)。高額化ではさまざまな付加サービスによる付加料金の検討(例:税金対策コンサルティング、ローン紹介、保証人不要化など)。

多数化・・・顧客層の安定化では継続策の強化(例:入居者向けカードサービスの導入やアフターサービス強化による親和感の上昇)。リピーターの拡大では継続契約の強化(例:次回契約時の諸費用の割引化、連携店による諸費用の割引化など)。

多層化・・・エイジレス化・ユニセックス化に見合う年齢・性別需要の見直し(例:長寿化に伴う年齢別需要変化に対応、30~40代独身男女対応など)。ユニバーサル化として弱者対応の強化(例:要介護者や高齢者に特化した仲介サービス)。超国籍化として外国人向けサービスの強化(例:アジア系留学生・看護介護者や国際結婚者向け仲介の拡大)。

多面化・・・海外スティや山村空き家仲介などの拡大(例:東南アジア地域中高年向け長期滞在地紹介、官民協業による「空き家バンク」事業の実施など)、メンテナンスや生活サービス事業の強化(例:定期的設備点検サービス、高齢者生活支援・介護サービスの提供など)。

多接化・・・店舗オープン化(例:見通しのよい店舗や入店しやすいデザインなど)、カウンターサービスの向上(例:デジタル情報を超えるクチコミ情報の提供)、インターネットやソーシャルメディアの活用(例:ネット情報とクチコミ情報の相乗化など)。

新営業対策の5つの戦略

戦 略

戦   術

内           容

宅地建物取引業への応用

多額化

低額化

廉価化、増量化

仲介料、更新料、修繕費、手数料などの見直し
付加サービスによる高額化

定額化

定額化、詰め放題化

高額化

機能高額化、記号高額化、私用高額化

多数化

複数化

複数所有化、複数割引化

次回契約時割引化、連携店割引化
リピーター拡大、アフターサービス強化

リピート化

ポイント化、愛着化、リニューアル強化

多層化

エイジレス化

年齢再区分化、増子・中年対応化

年齢・性別による顧客区分の見直し
要介護者、高齢者など客層の見直し
外国人、国際結婚者向け紹介強化

ユニセックス化

異性化、両性化

ユニバーサル化

ノンハンディ化、逆エイジレス化、介護支援化

超国籍化

超国籍化、国際結婚化

多面化

業態拡大化

本業深耕化、関連商品・サービス開発化

海外スティ、山村空き家仲介
メンテナンス、生活サービス事業強化

業種拡大化

関連分野併設化

多接化

直接接触化

オープン店舗化、クチコミ強化、手作り広告化

店舗オープン化、カウンターサービス向上
インターネット、ソーシャルメディア活用

間接接触化

マスメディア利用化、ソーシャルメディア活用化


(リアルパートナー・2011年11月号)

人口減少時代の宅地建物取引業・第2回・大震災で加速する人口減少
(現代社会研究所所長・古田隆彦)

◆飽和した人口容量

 人口減少の背景には、人口容量の飽和化がある。人口容量とは自然環境を文明の力で利用して作りだした人口の許容量で、現代日本でいえば、日本列島の自然環境を科学技術文明の応用によって生み出した約1億2800万人だ。
 1990年代にこの容量が満杯になったため、「少産・多死化」で人口が停滞し、2005年から減り始めた。基本的な要因は、科学技術と国際化を基盤にする加工貿易体制の限界化だが、もう一つは、日本列島の自然環境にも制約が現れたことだ。東日本大震災は、列島の不安定さとともに、原発事故によるエネルギー供給体制の限界もまた露呈させた。
 このため、大震災は人口容量の限界と連動して人口減少を加速させるとともに、経済活動を需給両面から縮小させ、社会的にも「飽和・成熟」ムードを定着させる。

◆大震災で何が変わるか?
 人口動態では、死亡数の増加と出生数の減少で、減少傾向がさらに進む。とりわけ、東日本の人口を減らし、西日本への移動を招く。家族構造でも、不安にかられた未婚者に結婚を促す一方、地震や津波による死別や、伴侶への不満による離婚を増加させる。
 経済動向では、工場や流通施設の損壊による生産能力の低下に、原発事故によるエネルギー制約が加わって、企業活動は大幅に萎縮し、GDPも停滞する。今後は復興のための諸負担も増加するから、個人所得は低迷し、消費支出も抑制される。
 このため、今後の生活意識では「成長・拡大から飽和・成熟へ」の移行が進み、3S (slow,simple,small)志向が拡大するが、他方では大震災対応への反省から、コミュニティーや互酬・互恵制への意識が高まり、良好な血縁・地縁社会を構築しようという動きが強まる。

◆住宅市場へのインパクト
 以上のような変化は、住宅市場にもさまざまな影響を与える。人口減少の加速は、全国的に住宅の総需要を減少させるとともに、増築・移転志向を低下させ、空き家を増加させる。所得の停滞や諸負担の増加が拡大すれば、住宅の新規需要も量的には停滞し、また新規投資の低迷や既存物件の劣化などで住宅供給も減少する。
 とりわけ東日本では、人口減少や経済停滞で住宅需要が減少するうえ、復興住宅の整備も遅れ気味となるから、需給両面で市場が低迷する。もっとも、新築住宅の需給が停滞すれば、僅かながらも賃貸需要の増加が見込まれ、さらにミクロに見れば、結婚の増加で新居需要が増加し、死亡率や離婚率の上昇で中高年の単身者や単親者(シングルファーザーやマザー)向けに、新たな居住形態の需要が増加する。
一方、住宅や宅地の選好基準では、高層マンションから中・低層マンションへ、埋め立て地や造成地から地盤安定地へ、駅遠隔地から駅近隣地へ、といった動きが顕著になる。
以 上のように、人口減少と大震災の影響で、住宅需要の量的減少と質的変化が進んでいく以上、宅地建物取引業の経営では、新たな方向性を早急に探らなければならない。

大震災・住宅市場へのインパクト

影 響

影 響 事 項

住宅市場への影響

人口変動

死亡数増加

空き家増加

出生数減少

増築・移転志向減少

総人口減少加速

住宅総需要減少

家族変化

結婚増加

新居需要増加

離別単身者増加

中高年単身者向け需要増加

単親者増加

単親者向け住居需要増加

地域変化

東日本人口減少

住宅需要減少、住宅ストック減少

東日本経済停滞

復興住宅需要増加、一般住宅需要減少

経済変化

経済停滞

住宅需要減少、供給物件減少

税金負担増加

所有物件需要減少、賃貸需要増加

所得停滞

住宅需要減少、賃貸需要増加

生活意識

成長・拡大志向縮小

3S(slow,simple,small)志向拡大

コミュニティー・互酬・互恵制拡大

良好コミュニティー地域志向

居住意識

高層マンション忌避

中・低層マンション需要増加

埋め立て地・造成地忌避

地盤安定地需要増加

駅近隣志向拡大

駅近隣需要増加


(リアルパートナー・2011年10月号)

人口減少時代の宅地建物取引業・第1回・人口減少で激変する住宅需要
(現代社会研究所所長・古田隆彦)

◆2004年末にピークを超えた日本の人口は、2005年から減り始めており、このまま進めば、2040年代に1億人を割る可能性が高い(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来人口推計」2006)。「合計特殊出生率がやや回復したから、出生数が微増して減少傾向は弱まる」との見方もあるが、東日本大震災の影響で死亡数が増える可能性もあるから、増減は相殺されて、やはり2040年代に1億人を割るだろう。人口の減少に伴って総需要、年齢、家族、地域、移動などの変化が連動し、宅地建物の需要構造もまた大きく変わる。

人口減少が誘発する5つの変化
第1は住宅総需要の減少。総人口が減れば、衣食住すべての需要が減るから、住宅や宅地に関する需要も減少は避けられない。新規住宅や宅地の購入需要はもとより、賃貸住宅の需要もまた、量的には減少する。人口に比例するとすれば、現在より2020年には4~5%、30年には10~12%が消えていく。

第2は年齢構成の変化。人口減少と連動して「少産・長寿化」が進んでいくから、総人口の年齢構成は、年少者よりも年長者が多い「逆ピラミッド型」になり、同時に長寿化によって人生の区切りも上昇する。従来は、平均寿命が70歳前後であった1960年ころの人生観に基づいて、0~6歳を「幼年」、7~14を「少年」、15~29歳を「青年」、30~64歳を「中年」、65歳以上を「老年」とよんできた。だが、平均寿命が女性86.4歳、男性79.6歳に達した現在では、0~9歳を「幼年」、10~24歳を「少年」、25~44歳を「青年」、45~74歳を「中年」、75歳以上を「老年」としたほうが適切になる。
 そうなると、青年、中年、老年など、年代別の住宅需要が大きく上方へシフトする。あるいは、住み替え需要の売買・賃貸物件も、年齢別にはかなり上方へ移行する。

第3は家族構造の変化。人口減少は家族の形も大きく変える。家族総数は2015年の5060万世帯でピークを迎え、20年には5044万世帯、30年には4880万世帯へ減る(国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」2008)。
 家族の形も、3世代以上が同居する「多世代家族」に親と子どもの「核家族」を加えた比率は、15年の38%から20年には36%、30年には33%へ低下。一方、単独世帯は33%から34%、37%へ、これに夫婦のみや単親世帯(シングルマザーやファーザー)を加えると、62%から64%、67%へ増加。多世代や核家族のような「伝統的」家族は減少し、単身者、夫婦のみ、単親者など「非伝統的」家族がますます増える。
 家族形態は質的にも多様化し、同棲、事実婚、別居婚、子連れ再婚なども増える。あるいは、単身者がマンションの一室や一軒家で共同生活するルームシェアやハウスシェア、複数の家族や元気な高齢単身者が一緒に暮らすコレクティブハウスなど、非血縁的な居住形態も登場する。従来の「家族」に代わる「他族」「多族」、いわば「スーパーファミリー(超家族)」の拡大である。家族形態が量的・質的に変われば、住宅需要もまた急変する。

第4は地域分布の変化。都道府県の人口減少は、2010年までに約8割、38道府県に達している。今後も2015年にかけて4府県、20年にかけて3県、20~25年に東京都、26~30年に沖縄県が加わって、以後はすべての都道府県で人口が減少する。住宅への需要減は地方から始まり、高齢化の進行や不住物件の増加で空き家も急増する。

◆第5は移動人口の減少。都道府県の相互間や内部の人口移動も、地域人口の減少や移動意識の低下で次第に減っていく。1990年代以降、都道府県間や内部での人口移動率はすでに減少傾向にあるが、今後もいっそう進行することが予想される。とすれば、転勤や住み替えなど、居住地移動に伴う住宅需要もまた減少する。

◆アイデンティティーを見直す
 ここまで需給環境が変ってくると、「住宅・宅地の売買・賃貸仲介業」という宅地建物取引業の業態も変わらざるをえない。社会的な需給関係の変化に対応して、新たなアイデンティティー(存在目標)を模索することが必要になる。
新たなアイデンティティーとは何か。それは多分、「良好な住環境をユーザーに提供する」という業種の原点に立ち戻って、「多面的な住生活提案業」へと移行していくことではないか。次号から、その具体策を考えてみたい。
(リアルパートナー・2011年9月号)

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