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現代社会研究所  RESEARCH INSTITUTE FOR CONTEMPORARY SOCIETY
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時代が求める新必需衣料(現代社会研究所所長・古田隆彦)


人口減少に比例して、消費市場では衣食住など生活必需品の需要が減る。これを覆すには、一方では新たな必需品を開発して、日常市場を再開拓し、他方では新たな選択品を創造して、非日常市場を拡大していく、という両面作戦が求められる。

アパレル市場でいえば、普段着や下着などで、新たな必需衣料を開発して日常市場を維持するとともに、アウターやフォーマルなどでさらにユニークな選択衣料を創造して、非日常市場を広げていく、ということだ。

必需衣料の中味が変わる
衣料ではファッション性が重視されるから、選択衣料の拡大が重要と思われがちだが、必ずしもそうではない。人口減少で暮らしが大きく変わる以上、日用品や必需品にも、新たな機能性を持った衣料需要が広がってくるからだ。

必需衣料とは、アンダーウエア、ルームウェア、ホームウェアなど、身体保護性、保温性、吸湿性、利便性といった諸要素を基本的な機能とする衣料。私たちが毎日の暮らしを維持していくうえで、欠くことのできない生活財といってもいい。

こうした機能は、人口増減に関わりなく、常に求められるが、人口構造が変われば、その内容も変わってくる。総人口は確かに減っているものの、寿命は長くなったから、1960年に男65歳、女70歳だった平均寿命は、2010年には男80歳、女86歳と、男は15歳、女は16歳も伸びた。少なく生まれて長く生きれば、必需衣料にも50年前とは違った機能や品質が求められる。それはいかなるものなのか、主な分野を展望してみよう。

4つの有望市場
一つは少産化市場。ベビーの数も減っているが、その分、母子は大切に扱われる。妊娠中の母親には、できるだけ負担が少なく、快適性を維持できるマタニティードレスが、出産後には授乳に便利なウエアやおむつ交換を簡易化するベビー服などが必要だ。(先例:良品企画、日本トイザらスなど)

二つめは青・中年市場。人生の長期化で、青年時代は40歳代前半まで、中年時代は60歳代まで、実質的には伸びた。働く期間も伸びるから、できるだけ快適に過ごしたいという願望が高まる。そこで、保温下着や消臭衣料などが伸びてくる。(先例:ユニクロの「ヒートテックエクストラウォーム」、ワコールの「スゴ衣(い)思いの丈」、セブン&アイ・ホールディングスの「ボディヒーター」、セーレンの下着「デオエスト」、コナカのワイシャツ「ムッシュオン ファブリック」など)

三つめは超中年市場。従来は高齢者とよばれてきた65~74歳は、昨今では中年の延長と見なされ、超中年(ハイパーミドル)となった。彼らが求めるのは、アンチエイジング衣料や機能性下着などだ。(先例:ダイエーの「クリスティ」、グンゼの「キレイラボ」など)

四つめは高齢市場。年齢構成の逆ピラミッド化で、75歳以上の高齢者は、量的にも急増するうえ、着脱容易衣料、ユニバーサル衣料、医療機能衣料、介護者用の介護服など、質的にも新たな需要を増やす。(先例:名美の「キアレッタ」。ワールドワークの「ジーボタン」、トリンプ・インターナショナル・ジャパンの「マグネセレブ」、フォークの抗菌・防臭介護ユニフォームなど)

以上のように、少産・長寿時代の年齢別市場では、新たな機能、性能、品質を持った必需品が強く期待されている。
衣料関連企業は、それぞれの得意分野に立ち戻って、これらの新商品を積極的に開発すべきだろう。
その延長線上には、機能性とファッション性を巧みに融合させた、アパレル市場の明るい未来がひらけてくる。

(詳しくは繊研新聞・2013年12月10日・Study Room)

人口減少をチャンスに変える地域経営戦略(現代社会研究所所長・古田隆彦)


1.人口減少のゆくえと背景

  • 人口はどこまで減るか・・・直接の理由は「少子・高齢化」?・・・真因は人口容量の飽和化
  • 人口波動:人間は文明で人口容量を広げる!・・・日本人口の推移・・・縦軸正対数・横軸逆対数
  • 急減する地域人口・・・都道府県の人口減少・・・推移と展望、熊本県の人口予測

2.人口減少地域を活かす

  • あらゆる資源を活かす・・・余剰教員在住者を活かす、廃校・旧工場を活かす、空家を活かす、休耕地を活かす
  • ヒト・モノ・土地・人脈を最大限に活かす

3.超中年・超老年を活かす

  • 上昇する年齢構成・・・年齢区分は新尺度で!…熊本県・年齢構成の予測
  • 超中年を活かす・・・農業、流通業、交通、70歳現役応援センター
  • 超中年市場を広げる・・・I T 市場、スマホ市場、体操教室、ゲームセンター
  • 超老年市場を広げる・・・老年者支援タクシー、過疎地ネット宅配、キャバレー再利用デイケアセンター、シニアと孫向けゲームセンター
  • 高齢者を育児に活かす・・・幼老統合ケア、幼老複合型ケアセンター
  • 高齢者資産を子育てへ活かす
  • 超中年を雇用と消費で活かす、超老年を消費と資産で活かす

4.多様な家族を活かす

  • 家族が多様化する・・・新型家族の登場
  • 子育て支援サービス・・・子育て支援タクシー、子育て支援シェアハウス
  • 急拡大するシェアハウス・・・付加価値型シェアハウスの登場・・・アウトドア派向け、農業体験型、英会話修行型、職業教育型、各地へ広がるシェアハウス
  • 各地に広がるコレクティブハウス・・・東京都から地方都市へ
  • 各地に広がるコミュニティー重視型マンション・・・関西から全国へ
  • 旧家族・旧地縁を活かす+新家族・新地縁を活かす

5.濃密都市へ向かって

  • ソフト戦略:濃密産業を創造する・・・人口減少市場への2つの対応
  • ハード戦略:コンパクトシティーからコンデンスシティーへ・・・圧縮都市から濃密都市
  • コンデンスシティーとは・・・①旧資産・旧エリアを最大限に活用、②権利と義務を重んじる市民の育成、③濃密な暮らしと商いの実現 

6.総合対策を考える

  • 減少・縮小に対応した地域機能の再構築・・・行政・経済界・地縁組織の三制度鼎立・・・コンプレックス社会
  • 政策マーケティングの可能性・・・地域政策のメリハリ化・・・誰に何が期待されているのか?

エピローグ

  • ニューリーダーは地域社会から・・・江戸中期人口減少社会に学ぶ
  • 人口減少は避けられない!・・・①マイナス面の抑制、②プラス面の活用、③新しい常識を創る


(熊本県・企画振興部・熊本政経塾・2013年7月17日で講演)

文明としてのマーケティング(現代社会研究所所長・古田隆彦)

プロローグ:人口下降期の社会とは・・・

  • 人口が減少する社会は人口波動の最終段階・・・①濃厚・調整の時代、②供給過剰で需要者優位、③物的限界で情報深化
  • 広義のマーケティングとは、需要者と供給者の間の交換行為を適切に取り結ぶ、集団的・社会的なしくみ
  • 研究会会長・井関利明慶応義塾大学名誉教授のご助言で「intermediating」と英訳
  • 人口下降期のマーケティングの課題・・・①交換制度の見直し、②「価値・効用」の見直し、③情報革命から物質革命へ

1.交換制度の多様化に対応する
  • 世界人口の5大波動を生み出した5大文明・・・生産・交換制度の歴史
  • 先学諸賢の視点(F.リスト、K.マルクス、K.ポランニー)・・・ポランニーの4つの生産・交換制度・・・家政・再配分・互酬・交換(市場)
  • 5大波動の生産・交換制度・・・4つの制度の比重推移
  • 第5波動・工業文明社会の現在と今後・・・市場交換の限界と再調整
  • 交換制度の多様化・・・市場・政府・地域の関係調整・・・再配分=政府の見直し=政策マーケティングの必要性、互酬制度の見直し=家族・コミュニティーの変貌
  • マーケティングの多角的対応・・・①市場経済ではDemanderとSupplierの接近、②再配分(福祉国家)へのソーシャル・マーケティング政策マーケティングの拡大、③互酬(新家族、コミュニティー)へのソーシャル・デザインコミュニティー・マーケティングの進展、④家政(個人・家族)では①②③の統合化・コントロール化が必要

2.「価値」よりも「私効」を重視
  • 「価値」を解体する・・・「價」と「値」とは何か・・・漢字の語源
  • 日本の人口波動に見る「価値」の歴史
  • 農業前波前期:大和言葉では「ねうち(音を打つ=有用性)」と「あたひ(アタアヒ=相当性)」を区別
  • 農業前波後期:價直=中国・仏経典に由来、「相当性」に比重・・・平安時代(8世紀)に渡来、「げじき」または「けしき」と読まれ、「相当性」の意味
  • 農業後波後期:江戸中期、最初の蘭日辞典『波留麻和解』(1796)で「waarde」の訳語「價値」、最初の英和辞典『諳厄利亜語林大成』(1814)で「value」の訳語「價値」・・・翻訳語「價値」は「有用性+相当性」の二義性・・・西欧の「價値(価値)」概念は約200年前に日本へ移入
  • 工業現波前期:幕末の英和辞典『英和対訳袖珍辞書』(1862)や維新後の『経済原論』(1870)では「value」は「價直」・・・『経済新説』や『経済入門』(ともに=1873)では「value」は「價値」・・・明治6年=1873に「價直」は再び「價値」へ
  • 西欧古代ギリシア・・・アリストテレス『ニコマコス倫理学』:様々な事物の特性には「有用性(クリシモス)」と「均等性(イソス)」の2つがある。
  • 西欧古典経済学・・・A・スミス『富国論』(1789):価値には2つの意味=使用価値・交換価値
  • マルクス主義経済学・・・K.マルクス『資本論』(1867):価値には3つの意味:使用価値・交換価値・剰余価値
  • 西欧近代経済学・・・W・S・ジェヴォンズ『経済学の理論』(1871):価値には3つの意味=全部効用・限界効用・購買力
  • 「限界効用」論の限界・・・効用の時間的変化を抽出したが、質的変化を見落とす
  • 現代言語学の“価値”論を応用・・・ラング・パロール1・パロール2の関係・・・生活学の「価値・効用」観へ発展
  • 「価値」とは何か・・・①価(あたひ=相当性) +値(ねうち=有用性)の複合語、②ねうち=モノに付随する有用性=使用価値=効用、③あたひ=2つ以上のモノの相当性 =交換価値=購買力
  • ねうち(効用)の分化・・・①社会的効用=共同効用(social utility)=共効、②個人的効用=個人効用(personal utility)=個効、③純私的効用=私的効用(private utility) =私効
  • 価値には4つの意味:私効・個効・共効・交換価値
  • パロール2の集積がラングを変える→私効の集積が共効を変える
  • マーケティングの新たな目標・・・供給過剰社会では共効・個効よりも私効が優位
  • 新しい〈価値〉創りの5つの手順・・・①生活者の新・私効(値)に注意、②新・私効の拡大が新・共効(価)になるかに注意、③新・共効に対応する商品(価値)を創造、④新・共効を旧・共効より優位にする(新しい値)、⑤新しい〈価+値〉のある商品を普及

3.情報革命から生産革命へ
  • 情報化は人口波動の下降期の特性・・・世界波動の5つの下降期、日本波動の5つの下降期・・・ともに情報化時代
  • 3Dプリンターの衝撃・・・生産者 ・生活者の融合、価値・効用の逆転、情報と集合知による生産革命
  • 情報化のミクロ展望・・・①「インターネット革命」から「メーカーズ革命」へ、②「情報革命」→「集合知革命」→「生産革命」、③旧・需給関係から新・需給関係へ
  • 情報化のマクロ展望・・・①人口波動下降期は情報化する、②情報の深化→集合知の革新→世界観の革新、③新世界観が次期文明を作る
  • 新たな文明の可能性・・・日本人口は再び増加へ
  • マーケティングへの3つの期待・・・新たな時代への需要サイドとそれを実現する供給サイドの仲介者・・・①「情報革命」から「生産革命」への仲介、②旧・需給関係から新・需給関係への仲介、③情報深化による世界観転換を促進

エピローグ:マーケティングの新たな課題
  • 対象領域の拡大・・・市場経済から国家経済や相互扶助へ
  • ネウチの多様化へ対応・・・共効から個効・私効まで
  • 高度情報化による需給変化へ対応・・・生産革命から世界観転換

(マーケティング・トレンド研究会・第274会・6月13日で講演)

シングル消費をどうつかむか(現代社会研究所所長・古田隆彦)

要旨
  • 一人暮らしの単独世帯、いわゆるシングル(単身者)が増えている。人口減少と少産・長寿化の影響で、家族の規模や形が大きく変化しているからだ。今後のアパレル市場に、どのような影響が生じるのだろうか。

激変する家族構造
  • 国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計」(2013年)によると、家族の数は2010年の5184万世帯から19年の5306万世帯まで増えるが、そのあたりがピークで、以後は減っていく。一世帯当たりの平均的な規模も10年の2・42人から15年の2・34人、20年の2・29人へと縮小する。
  • 家族の形も大きく変化し、2010年から20年にかけて、「単独(単身)」は33%から34%へ、「夫婦のみ」は20%から21%へ、「ひとり親と子(単親)」は9%から10%へそれぞれ上昇するが、「夫婦と子」は28%から26%へ、「その他」は11%から9%へ低下する。
  • その結果、伝統的な家族、つまり3世代以上が同居する「多世代家族」などに、夫婦と子どもの「核家族」を加えた家族の比率は20年に35%にまで落ちこみ、逆に単身、夫婦のみ、単親の合計が65%となる。

急増する単身者
  • 単独世帯(単身者)は、2010年の1679万世帯から20年の1827万世帯を経て、35年には1846万世帯へ増加する。その後は緩やかに減少するが、35年の構成比は37%に達し、「3世帯に1世帯」を超える。
  • 2020年の状況を性別でみると、男性930万人、女性897万人。年齢層でいえば、10~20代18%、30代12%、40代14%、50代14%、60代13%、70代16%。80歳以上13%で、50代以上が57%と過半数を占める。
  • 背景には、若年層の晩婚化・非婚化、中年層の離別増、高齢層の死別増などがある。
  • 2010年の平均初婚年齢は、男性で31・2歳、女性で29・7歳。10年前に比べて、男性は0・4歳、女性は1・1歳上がった。
  • 50歳時の未婚を示す生涯未婚率も、男性で20・1%、女性で10・6%。10年間に男性7・6%、女性4・8%も増えた。
  • 離婚率でも、過去10年間に男性では40歳以上、女性では35歳以上の比率が上昇。また年齢別総世帯に対する死別者の比率(2010年)は、60代8%、70代23%、80代49%。90代76%、100歳以上86%と、年齢が上がるにつれて急上昇している。

シングル消費の特徴
  • 単身者、つまりシングルが増えると、暮らしの中身が変わり、新たな消費需要が生まれる。
  • まず注意すべきは、総支出額において、他の世帯に属する人たちより、1人当たりの消費支出が増えること。総務省の家計調査(2012年)によると、総世帯の年間121万円や勤労世帯の同119万円に対し、単身者は188万円、同勤労者は204万円と、1・6~1・7倍に達している。
  • 2つめにいえるのは、年齢の如何に関わらず、衣食住などの基礎的な生活分野で、単純化や簡素化が進むこと。そこで、必需財では、小ロット・小容量食品、量り売り販売、超小型家電などの少量化や、高機能調理家電、単身向け住宅などの新機能化へ、消費需要が高まる。
  • 年齢別では、若・中年向けに自炊用簡易食材、掃除ロボット、衣料・家具・家電レンタルサービスなどが、また高齢者向けには安心・安全確認商品やサービス、簡易家電、高齢シングル生活支援サービスなどが、それぞれ伸びてくる。
  • 3つめが特に重要で、選択財の分野では個別化や個性化が進む。単身者は独立性や自律性が強いから、一方では高級ブランドや有名商品を追い求めるユーザーが増えるが、他方では特注や手作りなどにこだわる人たちも増加する。その結果、選択財の需要はますます多様化する。

アパレル関連支出は1・8倍へ
  • 以上の消費傾向は、アパレル市場にも大きく影響する。
  • 「被服及び履物」への1人当たり支出を比較すると、総世帯の年間5・1万円や勤労世帯の同5・3万円に対し、単身者は7・5万円、同勤労者は9・1万円で、1・5~1・7倍にもなる(2012年)。
  • さらに12年から20年にかけて、総世帯数の伸び率は1・01倍だが、単身者の伸び率は1・07倍。単純に計算すると、被服及び履物への支出総額は、単身者が総世帯の1・6~1・8倍にも達する。
  • とすれば、シングル層に向けて、何を売ればいいのか。必需的な衣料分野では、保温性、軽量性、着脱容易性などの機能・品質面をさらに強化した商品の供給が必要だろう。
  • 一方、選択的な衣料分野では、高級ブランドや高額商品はもとより、ファストファッションやレンタル衣料、さらにはカスタマイズやセルフメードなどのこだわり商品まで、提供する商品の間口を大幅に広げていくことが求められる。
  • シングルの急増は、アパレル市場にも、予想以上のインパクトを及ぼすだろう。

(詳しくは繊研新聞・2013年6月11日・繊研教室)

人口減少時代の消費とマーケティング(現代社会研究所所長・古田隆彦)

1.急進する人口減少社会

①総人口が減少する、②地域人口が減少する、③年齢区分が上昇する、④新型家族が急増する

2.人口減少で消費が変わる
①消費の方向が変わる、②消費市場への3つの影響、③人口減少が生み出す新需要

3.3縮化へ対応する・・・総縮化・若縮化・家縮化
総縮化:人口減少で需要供給が縮小、生活者の暮らしも縮小志向へ、地域人口減少で過疎地が拡大
若縮化:平均寿命上昇で年齢構成が逆ピラミッド化、消費構造も若年主導から中・老年主導へ、低・若年の量的縮小、中・高齢の量的増加
家縮化:人口減少で生き方や暮らし方が変化、家族の規模・形態が大きく変化、家族の数が減少する、世帯当たりの規模も縮小

4.3超化へ対応する・・・超裕化・超齢化・超族化
超裕化:総人口減少で新たな生活需要が発生、GDP維持、GDP/人を上げる社会が目標、与えられた生活環境を活用、自分なりの暮らしを実現する「知足・自足型生活者」が増加、日常生活の拡大をほどほどに、心理的、感性的な非日常生活を充実
超齢化:平均寿命の上昇で、人生の区切りも変化、子ども、青年、中年、老年時代が上方シフト、従来の年齢を超える「超齢化」の進行
人生の各時期をゆっくり生きる生活者の増加、ライフスタイルや生活願望も大きく変化
超族化:晩婚・非婚化で若年シングル、長寿化で高齢シングル・・・単身世帯が増加、DINKS、単親、ステップファミリー、同棲、事実婚、別居婚の増加、ルームシェア、ハウスシェア、グループホーム、コレクティブハウス・・・非血縁的な同居世帯も増加、超族化の進行で、新たな世帯需要が拡大する

5.6差化戦略を駆使する・・・マーケティングの方向転換差別化から6差化へ
①縮小市場への2つの対応・・・日常=必需需要から非日常=選択品需要へ
差異化・・・欲望が対象、カラー・デザイン・ネーミング・ブランドで差をつける
差元化・・・欲動が対象、体感・象徴・神話で差をつける
差汎化・・・価値・消費者が対象、特殊需要の一般化でで差をつける
差延化・・・効能・生活者が対象。私仕様・参加・手作り・編集・変換で差をつける
差真化・・・真実が対象、勉学・学習、訓練・養生、作法・儀式で差をつける
差戯化・・・虚構が対象、遊戯・模擬、競争・ゲーム、混乱・めまいで差をつける
⑧6差化戦略のまとめ・・・差異化:流行・顕示よりも倫理・互酬の強化、差元化:新体感、季節儀礼、まじない商品の拡大、差汎化:新機能、新デザイン、新体感の一般化、差延化:私仕様、参加、手作り対応商品の拡大、差真化:身・心・家養生、容姿維持対応の強化、差戯化:一子豪華化、オタク化対応の強化

6. 多重化戦略のすすめ
人口減少が生み出す新需要へ、差別化×6差化戦略で対応、多重化戦略を展開する

(㈱タナベ経営・北陸支社主催「第59回タナベ北陸トップ会」5月22日で講演)

人口波動で未来を読む~人口減少要因への学際的アプローチ
(現代社会研究所所長・古田隆彦)

要旨
  • 人口減少の背景を、未来学の基本的な研究方法「学際的アプローチ(interdisciplinary Approach)」で解明していくと、超長期的な循環論である「人口波動」に辿りつく。
  • 人口波動とは、マルサスの人口循環論を基礎に、生物学や生態学の「Carrying Capacity(人口容量)」論や「修正ロジスティック曲線」、あるいは文化人類学や民俗学の「人口抑制装置」論などを組み合わせた理論である。
  • この視点に立つと、文化と文明のあやなす、人類史の壮大な推移が浮上し、さらにその延長線上には、来るべき次期文明の様相が見えてくる。

1.人口はなぜ減るか
  • 人口はなぜ減るか・・・直接の要因
  • 人口減少の真因・・・人口容量の限界
  • 動物の個体数はどう変わるか
  • Carrying Capacityとは何か・・・「環境容量」から「人口容量」へ
  • 動物の個体数抑制行動・・・本能
  • 人間の2つの抑制装置・・・本能+文化

2.人口波動とは何か
  • 人間は文明で人口容量を広げる
  • 世界人口の推移・・・5つの波動が浮上・・・石器前波・石器後波・農業前波・農業後波・工業現波
  • 5大波動を生み出した5大文明
  • 日本人口の推移・・・やはり5つの波動があった!
  • 20世紀末から現代人口容量の限界が露呈
  • そこで、人口抑制装置が作動した!

3.未来を読む
  • 文明の未来・・・世界
  • 2つの波動がペア・・・文明も継承・発展
  • 5大文明の3つのエネルギー源
  • 文明の未来・・・日本・・・受容から内発へ
  • 集約工業文明=工業後波へ向かって・・・粗放科学技術から集約科学技術へ・粗放市場経済から集約市場経済へ・全面的国際化から選択的国際化
  • 人口は再び増加する・・・さらなる未来へ
(横幹技術協議会・第37回横幹技術フォーラム・2013年3月12日で講演)

食品マーケティング大転換(現代社会研究所所長・古田隆彦)


 プロローグ:食品市場は今・・・

1.激変する内需市場

2.日常需要への差別化戦略~第1の転換

3. “価値”創りから“ねうち”創りへ

4.私的需要への差延化戦略~第2の転換

5.欲動需要への差元化戦略~第3の転換

6.真実需要への差真化戦略~第4の転換

7.虚構需要への差戯化戦略~第5の転換

エピローグ:マーケティング大転換・・・5つの転換を統合する

(食品マーケティング研究会・2013年2月26日で講演)

選択品」で売り上げを伸ばす!(現代社会研究所所長・古田隆彦)


 人口減少で消費市場が縮んでいます。衣食住など生活必需品では、顧客減少に比例して需要が落ち、価格も低下しているからです。アパレル市場でいえば、日常的なカジュアルウエアや機能的な家庭衣料は、どうしても安くなり、売り上げも低迷します。

こうした状況下で、衣料品関連業界が業績を維持し、収益を伸ばしていくには、いくつかの戦略が考えられます。一つは新しい機能や性能を持った〝新必需品〟戦略。もう一つは斬新なデザインやユニークなカラーなどを付ける〝新選択品〟戦略です。

前者は、ヒートテック、放湿性、消臭性など、新たな機能を持った必需品を開発して、減っていくユーザー層に、もう一着多く買ってもらう手法です。一方、後者は、鮮やかな、あるいは上品なカラーのウェアや、奇抜さや洗練さを示すデザインのドレスといった、新しい選択品を創造して、財布のひもを緩めさせる手法です。その延長線上で、他人の眼や世間体を意識する、ユーザーの自己顕示欲をくすぐって、高級ブランド化をはかる手法も有効といえるでしょう。

二つの戦略が基本ですが、それだけではありません。アパレル商品の売り上げを伸ばすには、さらにユニークな選択品を創る戦略が必要です。選択品とは、日々の暮らしに絶対に必要というわけではないが、豊かさや幸せを実感するには、どうしても欠かせないモノ。単なるモノを超えて、モノの上に載った心理的、情緒的なネウチを持った商品であるからです。こうした分野に踏み込むには、より大胆な戦略が必要です。

第一は新しさや流行の逆を突いて、伝統や習俗など、むしろ懐古的な方向を見直すこと。例えば縄文の力強さや江戸の洗練さを、巧みに活かしたドレスやスーツです。

第二は、他人がどう見ようと自分だけの満足を強く求めるユーザーに向けて、オーダーやセミオーダー、あるいは「私仕様」や「カスタマイズ」などで応えられる商品

第三は〝非日常〟向けの要素を強化した商品。必需品の多くは〝日常〟向けですから、遊びや真面目といった〝非日常〟的な要素を加えれば、新たな需要が喚起できます。例えば遊びの要素を高めて、通勤で着られるスポーツウエアやゲーム感覚を刺激するカジュアルウエア。あるいは真面目の要素を強化して、従来とは一味違う学生服や制服、未来志向の喪服や儀礼服など、フォーマル、セミフォーマルの新しい形を提案することです。

こうしてみると、低迷する日常需要を超えて、新たな非日常需要を創り出すには、機能や品質を基準にした必需品や、カラーとデザインに頼った選択品という、従来の二大戦略を超えて、生活需要の隅々にまで、よりいっそう目を配らなければなりません。

ジーンズ市場においても、斬新な選択品を創り出すため、発想の転換を試みてはいかがでしょうか。

(カイハラ「Fashion VOICE」2013年01月号)

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