人口減少で消費市場が縮んでいます。衣食住など生活必需品では、顧客減少に比例して需要が落ち、価格も低下しているからです。アパレル市場でいえば、日常的なカジュアルウエアや機能的な家庭衣料は、どうしても安くなり、売り上げも低迷します。
こうした状況下で、衣料品関連業界が業績を維持し、収益を伸ばしていくには、いくつかの戦略が考えられます。一つは新しい機能や性能を持った〝新必需品〟戦略。もう一つは斬新なデザインやユニークなカラーなどを付ける〝新選択品〟戦略です。
前者は、ヒートテック、放湿性、消臭性など、新たな機能を持った必需品を開発して、減っていくユーザー層に、もう一着多く買ってもらう手法です。一方、後者は、鮮やかな、あるいは上品なカラーのウェアや、奇抜さや洗練さを示すデザインのドレスといった、新しい選択品を創造して、財布のひもを緩めさせる手法です。その延長線上で、他人の眼や世間体を意識する、ユーザーの自己顕示欲をくすぐって、高級ブランド化をはかる手法も有効といえるでしょう。
二つの戦略が基本ですが、それだけではありません。アパレル商品の売り上げを伸ばすには、さらにユニークな選択品を創る戦略が必要です。選択品とは、日々の暮らしに絶対に必要というわけではないが、豊かさや幸せを実感するには、どうしても欠かせないモノ。単なるモノを超えて、モノの上に載った心理的、情緒的なネウチを持った商品であるからです。こうした分野に踏み込むには、より大胆な戦略が必要です。
第一は新しさや流行の逆を突いて、伝統や習俗など、むしろ懐古的な方向を見直すこと。例えば縄文の力強さや江戸の洗練さを、巧みに活かしたドレスやスーツです。
第二は、他人がどう見ようと自分だけの満足を強く求めるユーザーに向けて、オーダーやセミオーダー、あるいは「私仕様」や「カスタマイズ」などで応えられる商品。
第三は〝非日常〟向けの要素を強化した商品。必需品の多くは〝日常〟向けですから、遊びや真面目といった〝非日常〟的な要素を加えれば、新たな需要が喚起できます。例えば遊びの要素を高めて、通勤で着られるスポーツウエアやゲーム感覚を刺激するカジュアルウエア。あるいは真面目の要素を強化して、従来とは一味違う学生服や制服、未来志向の喪服や儀礼服など、フォーマル、セミフォーマルの新しい形を提案することです。
こうしてみると、低迷する日常需要を超えて、新たな非日常需要を創り出すには、機能や品質を基準にした必需品や、カラーとデザインに頼った選択品という、従来の二大戦略を超えて、生活需要の隅々にまで、よりいっそう目を配らなければなりません。
ジーンズ市場においても、斬新な選択品を創り出すため、発想の転換を試みてはいかがでしょうか。
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