最近の主張 2010
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現代社会研究所  RESEARCH INSTITUTE FOR CONTEMPORARY SOCIETY
最近の主張・2011こちら

長寿・濃縮社会へのパラダイムシフト(現代社会研究所所長 古田隆彦)

  • 人口減少社会とは何か・・・「少子・高齢化」ではなく「少産・多死化」、 本質は「人口容量の飽和化」、成長・拡大化から成熟・濃縮化へ、 ポストモダンからラストモダン
  • 増子・中年化が進む・・・ 人口減少期は長寿化社会、 寿命延長が年齢区分を変える、 年齢区分を変えれば増子・中年化、 濃縮社会化で人生が変わる
  • 長寿者の生き方が変わる・・・ 所得と仕事、 遊びの多様化、 学びと鍛錬、 衰えと介護
  • 新たな家族像を求めて・・・ 家族構造が変わる、 新しい家族を創る、 家族・地域・共同体の再構築
  • 濃縮社会の長寿者像・・・ ラストモダンの達成、 3制度鼎立へ向かって、互酬制の再構築=長寿者への期待
技術同友会・成熟社会委員会、2010年9月27日)

自作”志向は何をめざすか (現代社会研究所所長 古田隆彦)

  • 消費者が自主的に“モノ”を作り出す“自作”志向が強まっている。セルフビルド住宅、コーポラティブハウス、「デコユニ」、「デコ電」、「マスキン小物」などが流行している。
  • 同じような行動は、高度成長期以来、“生活者”の間で一貫して続いているから、筆者はJ.デリダの造語「差延」をもじり「差延化」戦略と名づけていた。既存の素材をさまざまなに解体したうえで、改めて再構築する「デコンストラクシオン(脱構築)」の主体を、生産者や流通業者に任せるのではなく、消費者や生活者におくべきだ、という意味だ。
  • 日本は今、人口減少社会に突入している。人口が減るのは、「少子・高齢化」のためではなく、現代日本を支えている「人口容量」の厚い壁にぶつかったからである。厚い壁に突きあったため、人口は減っていく。社会の進むべき方向も、拡大はもとより持続も縮小もありえず、「濃縮」(コンデンス・ソサイエティー)しかない。
  • 濃縮とは、これまで築いてきた経済規模やインフラストラクチャーなどを、減っていく人口でいかにうまく使いこなすか、という方向だ。
  • 変化はすでにはじまっている。企業や行政がとまどっている間に、生活者の間では自ずから人口を抑制し、見せかけのブランド、過剰なデザイン、常時は不必要な自動車などを敬遠しはじめている。
  • 差延化とは、こうしたトレンドの一つである。具体的にいえば、自分だけの有用性を求める「私仕様」、既存商品を自在に組み合わせる「編集」、製造過程に口や手を出す「参加」、既存商品の価値を換骨奪胎する「変換」、商品を素材化して自ら道具を作り出す「自作」などの手法をいうが、これらはすでにさまざまな形で広がっている。
  • とはいえ、自作志向や差延化といった生活行動の拡大を、一方向的なトレンドと考えてはならない。新たな有用性の構築とは、「公共から個人へ」「企業から消費者へ」「価値から効能へ」と、単一方向だけで可能になるものではないからだ。公共的な価値と私的な効能は、時代とともに変遷し、互いにせめぎあいながら、徐々に変化していく、まさにダイナミックな関係にある。
  • 現在広がりつつある“自作”志向は、社会全体が成長・拡大型から成熟・濃縮型へ移行していく時、従来の公共的価値を解体して、私的な効能次元で見直した上、新たな価値を再構築していく、一つのプロセスだ。その先に広がるのは多分、共有(sharing)、分立(rhizome)、コト化(signing)など、コンデンス・ソサイエティーに見合った生活様式ではないか。
詳しくは、建築雑誌、2010年6月号

ポスト・マーケティング・・・マーケティングが消滅し、ギフティングが浮上する (現代社会研究所所長 古田隆彦)

  • 市場原理主義への批判がマーケティングにも波及してきた。
  • フランスを代表する哲学者B・スティグレールは、今回の世界金融危機を20世紀型「消費主義」の終焉と理解し、私たちの生活を成り立たせてきた、家族構造や文化構造などの「象徴制度」をなし崩しに破壊したのが「マーケティング」だ、と強く批判する。
  • 内田樹も、戦後の日本で、モノを買わなければ自分らしくなれないと脅迫し続け、無理やり購買欲を喚起してきたのが経済社会だ、と批判する。
  • 洋の東西から巻き起こったマーケティング批判は、アメリカ型の市場経済システムとそれを前提にしたライフスタイルへの告発だ。だが、「マーケティングがだめだ」というなら、どうすればいいのか。
  • スティグレールは、「象徴制度」の再構築が必要だから、「寄与の経済」や「贈与の経済」が中心の、次世代産業モデルを提案する。内田もまた、日本経済を再生させるには、資源の枯渇、人口の抑制、市場の縮小という条件に適応する経済活動へシフトすることが必要だとして、「商品経済」から「贈与経済」への移行を提起する。
  • すでに1920年代、フランスの社会学者M・モースは、北西部アメリカインディアンのポトラッチやポリネシア原住民のクラという「義務的贈答制度」を発見し、現代社会の市場経済を補完するもの、と位置づけた。社会学者J・ボードリヤールも、1970年代に「クラやポトラッチの原理を物の社会学的理論の土台にすえたい」と主張している。
  • 従来のマーケティングを解体し、新たな方向を築くとすれば、一つは、商品経済と贈与経済のバランスを回復すること、つまり「ギフティング(互恵行為)」を浮上させ、マーケティングと並立させることだ。
  • もう一つは、消費者と生活者の間の「生活」空間を拡大して、企業からの一方的なマーケティングに、生活者からの「ライフ・メーキング」を拮抗させ、両者のせめぎ合いの中から、新たな商品やサービスを創造していく方向。
  • どちらの方向が有力になるのか、今のところ定かではないが、市場原理主義の消滅とともにマーケティングそのものも消滅していくのかもしれない。
詳しくは、繊研新聞、2010年5月18日、繊研教室

加工貿易体制の再構築を・・・新たな人口容量の創造が課題 (現代社会研究所所長 古田隆彦)

  • 不況長期化、デフレの進行、人口減少は、「加工貿易体制による人口容量の限界化」のためだ。
  • 現代日本の人口容量=約1億2800万人は、科学技術、市場経済システム、グローバル化の3つが支えているから、「加工貿易体制」といってもいい。
  • 加工貿易が成功したのは、工業製品は高価、資源や食糧は安価という、20世紀型の国際構造があったから。
  • だが、21世紀には、工業製品は安くなり、資源や食糧の価格は上がるから、人口容量にも限界が来る。
  • 限界を乗り越えるには、加工貿易体制を見直し、人口容量の再構築が必要だ。
  • 日本人は、海外から渡来した旧石器文明を再構築して縄文文明(新石器文明)を創造し、大陸から導入した粗放農業文明を改良して集約農業文明を作りあげた。
  • 今、私たちに求められているのは、加工貿易体制を支える三本柱を見直すこと。例えば、脱炭素エネルギー、東洋型市場経済、戦略的なグローバル対応の、3つを組み合わせて加工貿易体制を再構築していくことだ。
詳しくは、生産性新聞、2010年4月25日

●2010年代前半の社会・経済と食品マーケティング・・・市場縮小をどう乗り切るか (現代社会研究所所長 古田隆彦)

  • プロローグ…不況の中で何が売れているか・・・狙い目は3トレンド(節約・内向・実質)の外側!
  • 社会・経済・市場が縮む・・・人口減少、増子・中年化超家族化、3大都市圏減少
  • 消費性向はどう変わるか・・・G・G(言語・現象学)モデルで予測する、2015年の生活願望
  • 市場縮小をどう乗り切るか・・・市場縮小=顧客減少×需要縮小
  • 需要減少を乗り切る・・・市場拡大=顧客減少×需要拡大・・・究極は濃縮市場・・・実用品より選択品を狙え!
  • 食品市場を広げる量的戦略・・・経営資源を活かして、売り上げを維持する5多化戦略
  • 食品市場を変える質的戦略・・・新たな発想で、新しい需要を創る7差化戦略
食品マーケティング研究会,2010年1月28日

●2010年代後半の消費をつかむ・・・2016~20年の社会・経済・市場展望 (現代社会研究所所長 古田隆彦)

  • プロローグ・・・2008年4月の予測はどこまで当ったか?
  • 濃縮社会が始まる・・・ 総人口は現在より3~5%減少、若年者は1割以下、老齢者は3割ラインへ、旧家族は36%・新家族は64%へ、超家族の登場、3大都市圏の人口減少が始まる、人口減少県こそ先進県、アジアとアメリカは増え、ヨーロッパは停滞、生活構造はヨーロッパ型へ接近
  • 「平成安永」の社会・経済・生活を読む・・・ 「平成享保」から「平成安永」へ、江戸時代中期と現代日本の共通点、田沼時代への接近、 消費社会化、 コト社会化、 リゾーム社会化、 生活願望はコトごのみ・内交願望・感覚願望へ、 GG(言語・現象学)モデルで生活を読む
  • 濃縮市場をどうとらえるか・・・ ベースは3大拡大市場、 究極は顧客減少逆転市場、必需品より選択品(ニューセレクト)、 濃縮市場への2つの対応、量的維持をめざす5多化戦略、新しい需要を創る5差化戦略、 究極的対応は5多化×7差化=多重化戦略
販売実務協会・商品開発研究会2010年1月21日

●2010年の経済・社会と書店経営の課題 (現代社会研究所所長 古田隆彦)

  • 2010年の実質成長率はよくても2.0%、悪ければ0%前後で、1%ラインをなんとか維持できれば御の字だ。
  • 経済停滞の背景には、19世紀以降、日本が作り上げてきた経済・社会構造が大きな壁にぶつかった、という事情が潜んでいる。
  • 人口増加国が経済成長の原動力だというが、中国とて2020年代後半に、インドもまた40年代までに、人口が停滞する。人口増加国があてにできるのは、せいぜい10~15年。いつまでも人口増加を前提に、成長・拡大型の経済・社会を続けるのは無理
  • 景気停滞に象徴される、このような構造的変化が、日本の人口をさらに減少させ、同時に消費行動を縮小させる。
  • 経済停滞や人口・家族構造の変化に影響されて、生活者の消費行動も大きく変わり、「過剰消費から堅実消費へ」と移行。それとともに、「散財から節約へ」「外向きから内向きへ」「見映えから実質へ」という、3つのトレンドが目立つ。
  • 中・長期的にみれば、消費市場の規模は縮小しない。需要が減れば供給過剰で価格が下落するが、GDP(国内総生産)が維持できれば、個人所得が上がる。所得が上がり物価が下がれば、実質所得は増えるから、家計には余裕が生まれ、顧客の多くは選択品を求める。必需品の需要が減っても、選択品の需要は増えるから、消費市場は維持できる
  • 選択品の需要拡大に、「五多化」戦略(多額化、多数化、多面化、多接化、多面化)で対応すれば、市場規模は維持できる。
  • 書店経営には、多接化戦略として、各種のメディアやインターネットなどを通じて、できるだけ頻繁にユーザーと接触する「メディア接触化」と、商品やサービスをできるだけ頻繁に、かつ直接的にユーザーに対面させる「店頭接触化」の、2つが応用できる。
  • 多面化戦略でも、関連異業種に進出する「業種拡大化」や関連異業態を併設する「業態拡大化」などの手法が応用できる。
  • 「文化や知識に関する情報を広く流通する」という、書店経営のアイデンティティーから出発すれば、出版不況といえども、まだまだ打つべき対応策はある
詳しくは書店経営ゼミナール=日本出版販売株式会社、2010年1月15日刊、317号)

デフレ突破・・・人間に不可欠な“コト”を商品化 (現代社会研究所所長 古田隆彦)

  • デフレの背景は、需要減少と供給拡大
  • 需要減少の理由は、①世界的な不況で消費抑制の動きが拡大した、②経済停滞の影響で「背伸びよりも身の丈にあった暮らし」を望むムードが広がった、③人口停滞で慢性的な需要減少が始まったこと。
  • 供給拡大の理由は、①生産・流通業者が供給量を伸ばし続けている、②発展途上国の生産拡大で廉価な輸入品が増加、③ドバイショックで円高傾向が強まり廉価な商品が流入していること。
  • 少し視野を広げれば、デフレは21世紀の日本社会の常態。人口減少で顧客が減るから、生活必需品は確実に需要が落ちる。だが、供給量はなお拡大されるから、必然的に供給過剰が強まる。今後はデフレ克服が継続的な課題になる。
  • 本気で脱出するには、需要の増加が必要新たな選択品を創出しなければならない。
  • 選択品というと、余剰品やぜいたく品のように思いがちだが、そうではない。選択品の中には、生物としての人間に不可欠な〝モノ〟を超えて、ヒトとしての人間に絶対に必要な“コト”がある。
  • こうしたコトの拡大で、ゆとり層に新たな需要が喚起できれば、それは消費市場全体に広がって、物価水準を持ち上げる。
  • 21世紀のライフスタイルにふさわしい、斬新な選択品の創造こそ、デフレ突破の本命なのだ。

詳しくは繊研新聞、2010年1月5日、繊研教室

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