育児支援のアイデア商品を創造する──アクションケイ(2002.08)
少子化の進行で育児支援が急務になっている折、洗面台や台所の流し台を、赤ちゃん用の沐浴(もくよく)バスに変えてしまうアイデア商品が話題になっている。
「もっくよっく」という、この商品は、ポリウレタン製のシートを洗面台などに広げて吸盤で固定し、ベビーバスに変身させる。折りたたむと葉書二枚分だから、外出や旅行にも持参できる。使用後のお湯はそのままシンクに流せるし、立ったまま洗えるので母親に負担がかからない。洗面所用と台所用の二種類があり、価格は三六〇〇円と四八〇〇円。
ユニークな商品特性が関西ニュービジネス協議会に認められ、二〇〇〇年度の関西NBK大賞でヒューマン商品開発部門賞を受賞。これまでに約一万枚を売っている。
「もっくよっく」を開発したのは京都市のベンチャー企業、㈲アクションケイ(阪部智子社長)。阪部社長はもともと工業炉メーカーの営業職だったが、成績をあげてもなかなか認められず、子育て後の再就職も困難など、男社会の矛盾を強く感じて退社。アルバイト先で、たまたま「介護計画ソフト」を研究している助産婦グループと知り合った。
このグループの支援を得て、九八年の夏、女性の暮らしを側面からサポートする新会社を設立。同年一二月には、妊産婦向けに「安産のための体重自己管理ソフト」(一〇〇〇円)をまず開発し、インターネットなどで販売を開始した。
さらにグループのメンバーから「新生児の入浴では洗面台を使う人が多い」という、意外な事実を聞いた。最初は誰もが専用のベビーバスが使うが、バケツで湯をくんだり、温度を調整をしたり、腰をかがめて洗うなど、出産直後のお母さんにはかなり重労働。そこで、立ったまま洗えるし、お湯の出し入れも簡単な洗面台を利用する人が増えてくる。
もっとも、洗面台は雑菌が多くて大変不潔だ。それなら「水泳用のゴム帽を広げてシートにすれば…」と思いついた阪部社長は、いろいろと試した結果、某繊維メーカーのポリウレタン素材に行き着いた。天然ゴムよりずっと丈夫で、試用者にも好評だった。
九八年の暮れに発売したが、デパートへの納入を断られたり、通販会社が倒産したりで、セールスが得意だった社長も、かなり苦労した。が、今では東急ハンズをはじめ、ベビー用品店や大手玩具チェーンなどにも販路を広げ、着実に売り上げを伸ばしている。
この成功をきっかけに、同社では思春期から更年期まで女性の全人生をサポートする、という目標に向けて、インターネットを使った「妊婦のためのマルチメディアサポートシステム」や、女性のための会員制ホームページ「エルクラブ」も開始した。
次の開発目標はおしゃれな介護用品。「介護される人の気分や感性を尊重した商品をめざして、いろいろ知恵を絞っているんです」と、阿部社長は目を輝かせている。
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