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現代社会研究所  RESEARCH INSTITUTE FOR CONTEMPORARY SOCIETY
2014年以前は下欄からどうぞ!

人生100歳時代・・・生活者は、社会は、どう対応するのか?
YouTube・動画公開中 現代社会研究所所長・青森大学名誉教授・古田隆彦


基本的視点

人口波動からみた2050年:工業現波の下降期:ラストモダン:近代の総仕上げ期

コメント1:寿命は本当に延びるのか?

 人口容量の壁に突き当たる!

 人口抑制装置が作動する・・・平均寿命延長の限界化

 農業後波下降期にも平均寿命は延びなかった。

 人類史上、個人の生涯生存力(体力×寿命)は変わらないのでは?

 寿命は伸びたが、体力・生活力は低下した!

●コメント2:生活者はいかに生きるか?

 日本人の生活意識・・・5重構造(岩塾文化・縄文文化・弥生文化・江戸文化・現代文化)

 死生観も5重構造

 人生90年時代の生き方へ!

  ①人生双六を見直す:【学校⇒就職⇒離職】➡【育能⇒生業⇒涯業】

  ②成長・拡大型から飽和・濃縮型へ:【モノ拡大志向】➡【コト濃密志向】

  ③脆弱化から自立化へ:【市場依存型生活者】➡【自立・独創型生活者】

●コメント3:社会はいかに対応するか?

 社会制度の基本は・・・4つの生産・交換制度・・・K.ポラニーに学ぶ!

  ①家政・・・自給自足、家族生産・消費、家事

  ②互酬・・・原始共産制・相互扶助・象徴交換・贈与

  ③再配分・・・原始氏族国家・古代王権国家・中世封建国家・ 近代国民国家・現代福祉国家

  ④交換・・・物々交換・初期商業・貨幣経済・市場経済

 4つの制度の比重推移・・・人口波動毎に4制度は変わってきた!

 現代日本:4制度のバランスが崩れた!
  ・・・交換の過剰化・再配分の肥満化・互酬の縮小・家政の弱体化

 噴出する問題点
  ・・・日本型経営制度の限界化・社会保障制度の破綻・家族+地域機能の縮小・生活者の脆弱化

 ラストモダンの課題:4制度のバランスを再構築する!
  ・・・市場社会の見直し・福祉国家の見直し・親族+地域の再構築・生活者の再建

(日本未来学会2015年大会:2015年11月22日)

トイレットペーパーから何を学ぶ!?
現代社会研究所所長・古田隆彦

トイレットペーパーの市場動向が注目されている。
人口が減っているのに、販売量が増えているからだ。

経済産業省の統計(紙・印刷・プラスチック・ゴム製品統計年報)によれば、人口ピークの2008年に比べて、一昨年の総販売額は3%減の1616億円。人口の1%減よりやや減ったが、総販売量の方は1%増の104万トンでなおも増加している。

業界が打った7つの戦略


背景には業界の懸命な対応がある。販売量に陰りが見えた20年も前から、品質を上げ、新たなネウチを付けようと、さまざまな新商品を開発してきた。
通常1ロール20~30円に対し、各社が採った代表的な戦略を、筆者は表のように分けている。

最も基本となる〝
差別化〟では、機能や品質の革新をめざして、芯の中に消臭機能を加えた商品(大王製紙㈱、1ロール・税込35~40円)や、トイレの中でウエストを採寸できる「メジャー付きトイレットペーパー」(林製紙㈱、同104円)などが代表的だ。

カラー、デザイン、ストーリーなどで差をつける〝
差異化〟では、黒い紙のブラックロール(大昭和紙工産業㈱、同239円)や、短い小説をプリントした「トイレで読む体感ホラードロップ」(林製紙、同162円)がユニーク。

体感や潜在意識に訴える〝
差元化〟では、既存品とはまったく感触の違う「羽二重」(望月製紙㈱、同230円)や、招き猫や達磨をプリントした「運のつくトイレットペーパー」(林製紙、同104円)が先行している。

世の中に新しい用途を提案する〝
差汎化〟では、2ロールを花嫁と花婿のイメージで包んだ「コンビネーションドール・ウェディング」(㈱アルタ、同410円)や、インテリア商品としても使える「インテリアトイレットペーパー」(アピデ㈱、同504円)などが秀逸。

カスタマイズを実現する〝
差延化〟では「感謝を伝える言葉」「お父さんに伝える言葉」などの特注トイレットペーパー(㈱佐野包装、同170円)や、オリジナルイレットペーパー(ツユキ紙工㈱、同105円)でオーダーが可能。

さらには、日用品を勉学やトレーニング用に変える〝
差真化〟では、英会話をプリントした英語シリーズ(ツユキ紙工、同39円)や、百億年の星の一生を長さ70㎝の中に濃縮させた「アストロノミカル・トイレットペーパー」(天体物理学若手の会、同270円)など。逆に遊び道具に変える〝差戯化〟では「タレパンダ」「こげぱん」など人気キャラクターを印刷した商品(ツユキ紙工、同45円)や、「トイレットペーパー折紙」(林製紙、同104円)もある。

日用品や消耗品と思いがちなトイレットペーパーにも、意外なネウチを加えると、需要もまだまだ広がるし、価格も上がる。

ファッションに応用できるか

ファッションビジネスでも、同様の対応はすでに行われている。7

〝差別化〟では男性向け超軽量シャツやスーツ、女性向けのウォッシャブルスーツなどが進み、〝差元化〟でも通気性や吸放湿性の高いインナー、包帯素材で通気性を高めたショーツなど、新たな機能や感触を持った製品が発売されている。アパレル業界が最も得意とする〝差異化〟では、カラー、デザイン、ブランドなどで付加価値を高めた、さまざまな新商品が、消費市場の最先端を走っている。

もっともその分、他の戦略は後回しになるから、トイレットペーパーに学べば、まだまだ新たな可能性も生まれてくる。

第1は〝
差汎化〟の延長線上で、素材、用途、性別など、従来の常識を見直し、全く新しい製品を提案する。従来もシャツに模様を加えたTシャツや、ステテコをカラーとデザインで更新した「女子テコ」などが発売されているが、今後はデニムやガーゼなどを使ったスーツ、パジャマを改変した外出着、袴やモンペを更新したガウチョ風パンツなどはいかがだろうか。

第2は〝
差延化〟を拡大して、伝統的なオーダー衣料をより簡便化していく。すでにスマホで自作したデザインをそのままプリントするTシャツや、IT技術を応用したオンデマンド・ファッションなどが始まろうとしているが、その先には、2Dや3Dプリンターを柔軟に応用した新オーダーシステムやカスタマイズド製品が間違いなく広がっていくはずだ。

第3は〝
差真化・差戯化〟を応用し、フォーマル、スポーツ、カジュアル、デイリーなど、従来の境界を超えた商品を提案する。一部ではカジュアル化したフォーマル、オタク向け劇画調Tシャツ、キャラクター着ぐるみ衣料など、新たな提案も行われている。もう一歩進むと、伝統的な狩衣(かりぎぬ)を現代化したフォーマルや、柔道・剣道着を改変したカジュアルなど、斬新な転換も考えられる。

人口急減で顧客数が低下し、市場が飽和する時代には、これまでにも増して、より大胆な商品戦略が求められる。

(詳しくは繊研新聞:2015年7月21日:Study Room)

ゆとりある人口減少社会」をめざして
現代社会研究所所長・古田隆彦

社会人として新たに歩み始めた皆さんにとって、10年後、2025年の暮らしはどのように変わっているのでしょうか。


一番確かなことは、人口構造の大きな変化です。日本の総人口は現在の1億2691万人から1億2066万人へ、625万人、5%ほど減少します。「少産・長寿化」の影響で、年齢構成も0~14歳、15~64歳、65歳以上の割合が、現在の13:61:26から、11:59:30へとかなりシフトします。

人口構造が変わると、家族の形も変化します。総数でいえば、2013年の5011万世帯からやや増えて、25年には5244世帯となります。だが、1世帯当たりの人数は13年の2・51人から25年には2・25人へ、0・26人ほど縮小します。シングル世帯や子どものいない世帯が増えるからです。

変化が大きいためか、マスメディアなどでは「人口減少が進むと、経済・産業は衰退する」という悲観論が広がっています。人口に比例して、働き手が減れば生産力が落ち、消費者が減れば需要量も減っていくからだ、というわけです。確かにこのまま進めば、経済は縮小していくでしょう。

しかし、この理由をちょっと裏返せば、逆の方向が見えてきます。労働者が少なくなっても生産力が維持できれば、また消費者が減っても需要量が落ちなければ、需給両面から経済規模は維持できるからです。

生産力を維持・拡大するには、60~70歳代の人々はもとより、専業主婦、フリーター、ニートなど、現在潜在している労働力を、積極的に活用して働き手を増やす。同時に、パソコンやロボットなど、新たな生産テクノロジーを開発・駆使して、一人当たりの労働生産量を上げていく、という両面からの作戦が必要です。

需要量を増やすには、まずは人口減少、少産・長寿化、家族縮小など、人口減少社会に見合った、新たな〝必需品〟をどんどん開発する。さらには、ゆとりや成熟に見合った、ユニークな〝選択品〟を次々に創造して、新需要を広げていく。

供給と需要の両面に適切に対応すれば、国内市場は維持・拡大できます。市場が伸びれば、GDP(国内総生産)も確実に上昇します。GDPが少しでも上がれば、人口が減っていますから、一人当たりの所得はどんどん増えていきます。つまり、人口減少時代には、ゆとりある生活が可能になるのです。

こうした発想は、成長・拡大型社会を生きてきた旧世代にはなかなか理解できません。生まれた時から停滞社会を生きてきたヤング社員にこそ、可能になるものです。一方ではスマホやパソコン、ロボットや3Dプリンターなど、新たな技術やノウハウを貪欲に吸収し、他方では生活や社会の変化を敏感にとらえて、新たな新商品を次々に開発していく。

労働生産性と創造生産性の両方が高まれば、2025年は輝かしい年になるでしょう。


(詳しくは「FASHION VOICE」:カイハラ㈱:81号=5月号

人間は何を求めているのか? : 生活学マーケティングという視点
現代社会研究所所長・古田隆彦


1.心の中の3つの軸

1-1.縦軸(Vertical)の構造:唯識論・現象学・精神分析学の視点=感と言

●唯識論の8識と解脱、フッサール現象学のエポケー、無意識の発見
●生活願望の3つの次元・・・
 
欲望(仏désir、英desire、独begierde)とは文化的・記号的な願望
 
欲求(仏besoin、英want、独wunsch)とは日常的・実効的な願望
 
欲動(仏plusion、英drive、独trieb)とは生理的・感覚的な願望

1-2.横軸(Horizontal)の構造:言語学・記号学の視点=個と集

●身分け・言分け:身分け・言分けが作る6つの生活世界
●3つの願望=
ラング・パロール1 ・パロール2(社会的・集団的・個人的)

1-3.前後軸(Demarcation)の構造:象徴人類学の視点=真と虚

●メタ・メッセージ論
●言語空間の3分割:真実⇔日常⇔虚構、儀礼⇔日常⇔遊戯

2.生活マンダラの世界

2-1.3軸による生活体モデル:生活世界27界

●生活体マンダラによる27界と81面
●生活球マンダラによる7界と7願望・・・
日欲、欲望、欲動、世欲、私欲、真欲、虚欲

2-2.生活水準で生活願望が変わる

●生活水準上下・・・7願望の比例的拡縮
●生活水準極大・・・日欲極大・6欲拡大
●生活水準極小・・・日欲極小・6欲縮小

3.事業構想へ応用する

3-1.生活願望へ対応するマーケティング戦略
  ●日欲への戦略・・・
差別化
  ●6欲への6差化戦略・・・差異化、差元化、差汎化、差延化、差真化、差戯化

3-2.7戦略の実例
  ●トイレットペーパー
  ●シェアハウス
  ●ファッション


4.ネウチを創る

4-1.日本人のネウチ観

  ●大和言葉・・・「
ねうち」と「あたひ」を分ける
  ●漢字の
  ●弥生時代のあたひ
  ●奈良時代の「價直(かちょく)」、平安~鎌倉時代の「價直(げじき)
  ●江戸中期に「價値(かち)」が登場、幕末~明治初期に再び價直(かちょく)
  ●明治6年=1873年「價直」は再び「價値」へ、明治時代・翻訳語「價値」は現代語として定着

4-2.西欧人の“価値”観

  ●古代ギリシア:価値には2つの意味:
有用性・均等性
  ●古典経済学(A.スミス):2つの意味:使用価値・交換価値
  ●マルクス主義経済学:3つの意味:使用価値・交換価値・剰余価値
  ●近代経済学:3つの意味:全部効用・限界効用・購買力
  ●「限界効用」の限界・・・限界効用論の利点と欠点

4-3.現代言語学の“価値”観
●現代言語学の“価値”観を応用する・・・語義(言葉のねうち)と価値(言葉のあたい)
生活学の「ねうち=効用」観
生活者の位置・・・生産者・消費者・生活者はどこが違うのか
●3つのねうち(効用)=
私効・個効・共効
●「価値」とは価(あたい=相当性) +値(ねうち=有用性)の複合語
●ねうち(有用性=効用)の分化・・・
 ①社会的効用=共同効用(social utility)=共効
 ②個人的効用=個人効用(personal utility)=個効
 ③純私的効用=私的効用(private utility)=私効

●パロール2=私効の集積がラング=共効を変える
●マーケティングの新たな目標=私効・・・共効・個効よりも私効が優位
●新しい〈ネウチ〉創りとは・・・新・私効の拡大が新・共効(価)になるか

4-4.コトラー&マズローを超えて

  ●コトラーのMarketing 4.0=自己実現が目標・・・Marketing 5.0が見えた!
  ●マズローの欲求段階説・・・自己実現から
自己超越
  ●単一志向・一方向的進歩論を超える・・・
多角的・多面的生活願望をとらえよ!


5.事業構想から社会構想へ

5-1. K.ポランニーの4つの生産・交換制度

  ●家政から
互酬・再配分・交換
  ●4制度を生活球に位置づける
  ●4制度の史的展開・・・再配分と交換の肥大化が家政を弱める

5-2.望ましい社会を構想する
●4つの制度のバランス化
●交換:貨幣・市場経済の
肥大抑制
●再配分:
現代福祉国家の適正化
●互酬:相互扶助・贈与関係の
強化・拡大
●家政:自給自足・自立志向の
強化支援
                                              関連サイト・・・生活学マーケティング   
(2015年6月24日、事業構想大学院大学で講演)

3Dプリンターがファッションを変える
現代社会研究所所長・古田隆彦


プロローグ・・・世界に広がる3Dプリンターウェア

●2013.11.9:The "Quixotic Divinity" 3d printed headdress at 3D Printshow, London
●2013.12.10:The 2013 Victoria's Secret Fashion Show, New York
●2014.10.2:IRIS VAN HERPEN, Paris Fashion Week Spring Summer 2015, Paris
●2013.9.4:Materialize's Fashion Show, Embassy of Belgium , Tokyo



1.3Dプリンターの影響がアパレル産業へ

●Newyork Fashion Week(2014.9.14)・・・3Dプリンターで作った布地のドレスが登場!
●素材:TPE(Thermo Plastic Elastomer:熱可塑性エラストマー=プラスチックとゴムの中間的な高分子素材)
●形態:六角形のオブジェクトをメッシュ状に組み合わせ、立体的にプリントしたもの
●特性:布地の厚みに変化をつけて柔軟性を高め、ユーザーの快適性に配慮



2.3DPファッションの時代が始まる

●3DPによるファッションとは・・・
USAでは Computational Fashion, Kinematics Fashion など
むしろ3D Printed Fashion(3DP Fashion)と命名すべきだ!
●3DP Fashionの進行状況…3つの次元



3.衣料用3Dプリンターの現在:
3つの次元

第1次元・・・編み機とニット衣料の自作:OpenKnit
①WEB上から無料の設計図や製作マニュアルをダウンロード
②アルミの押出パーツ、モーター、編み針などを組み合わせ、8万円前後で3Dプリンター用編み機を自作
③この編み機と連携した、無料のソフトウェアをWEB上からダウンロード
④ウールやコットンなど市販の糸を用いてニット衣料を自作
第2次元・・・繊維や布地の製作
①専用の液体から3Dプリンターで糸を出力し、繊維(Fiber)や布地(Textile)を製作
②TPEやナイロンなどの素材を、粉末積層状にプリントし、それを用いてさまざまなパーツやウェアを製作(Figure or Statue)
第3次元・・・水着・下着・ドレスなどの製作
①シューズ、アクセサリーなどを直接3Dプリンターで製作(Figure, Statue)

②水着や下着などを直接3Dプリンターで製作(Figure, Sheet)
③本格的なドレス用プリンターは、各社が競作中、間もなく実現予定



4.3DPファッションのインパクト

to Users
①複雑なデザインが可能に
②快適性・耐久性に優れたウェアが可能
③パーソナルウェアの拡大
④ユーザーが自分の体型をスキャンし、ぴったりの衣料を自作
⑤One and Only(世界でただ一つ)の製品が急増
to Stores
①流通方式の多様化:ユーザー自身がデザインやサイズなどを考えた衣料を、複数ルートから適宜選択して入手
❶WEB上の3DP企業に発注
❷店頭の3Dプリンターを借りて自作
❸自宅の3Dプリンターを使って自作
②アパレル市場の3分化
❶従来からの既製品を販売
❷WEB上での自作製品・素材・ソフトウェアなどの販売
❸店頭での自作用商品の販売
to Makers
①生産・流通コストの激変
❶プリンター関連コストや原料調達費が増加
❷最終製品の配送が不要となり流通コストが激減
②商品製造方式の多様化
❶商品製造の省力化が進む
❷活用面が様々に拡大
③デザインやカラー担当者の独立化
❶デザイナー、パターンナー、カラーリストなどの専門職は、繊維や縫製と一体化したアパレル企業では不要化
❷デザインやカラーなどの「記号」を創りだすクリエーターへ移行
●最終的にはアパレル市場の2極化・・・3DPファッション拡大でアパレル市場は2極化
①純私的な自家製衣料支援市場
②量産衣料を販売するファッション市場



5.インパクトは産業社会全体へ

●3DPファッションの拡大→アパレル業界の大変革
●「価値」の提供→「私効」の並立
●アパレル市場の影響→現代産業社会への影響
価値主導から私効重視へ
●共創社会へ向かって


(2015年5月27日、JIAM 2016 OSAKA ビジネスフォーラムで講演)

悪い話ばかりじゃない・人口激減社会の利点検証
現代社会研究所所長・古田隆彦
〝人口減社会〟は、果たして悪いことばかりなのか。

「人口減少に見合った社会をつくること、つまり、成長拡大社会から成熟濃縮社会を目指すことで、むしろ、私たちの生活は豊かになります」

と指摘するのは、現代社会研究所の古田隆彦所長である。

「徳川吉宗が8代将軍に就いていた1730年ごろ、江戸時代の人口はピークを迎え、3200万人に達したと推定されています。しかし、その後の70年間では、飢饉や天変地異によって、人口はおよそ300万人減少しました。ところが、まさに、その時期、蘭学などの学問が栄え、さらに、歌舞伎、戯作などが花開いたのです」

なぜ、人口が減少すると、文化が爛熟するのか。

「農民は耕作面積の拡大が可能になったことに加え、労働力不足に対応すべく、新たな農機具を開発しました。その結果、コメの収穫量が拡大し、木綿や菜種など換金作物の生産にも手を伸ばせるようになった。豊かになった農民が都市部で貨幣を使うことで、経済は活性化した。その生活の〝ゆとり〟が江戸文化を勃興させました」(同)

14世紀のヨーロッパでも、同じようなことが起こったという。

「ペストの大流行によって、約7400万人だったヨーロッパの人口は、わずか10年の間に約5100万人にまで激減しました。ですが、働き手が減っても、工夫をすることで農業生産量は保たれていた。賃金は高騰し、農業生産者にとって黄金時代を迎えている。その富が都市部に流れ込んで、フィレンツェのような都市国家を繁栄させ、ルネサンスを生み出した。ルネサンスは、芸術のみならず、羅針盤や火薬などといった目覚しい科学技術の発展ももたらしたのです」(同)

人口減社会によって、否応なしに迫られる産業構造の転換が功を奏した格好なのだ。

「現在の日本でも、トイレットペーパー業界などは、すでに人口減社会を見越した取り組みを始めています。人口減に比例して、トイレットペーパーの需要は落ちこんでいますが、柔らかさとかデザインなどの付加価値をプラスすることで、値段を高くし、業界全体の売り上げを拡大させています」(同)

経済規模が変わらないままに、人口が減れば、当然、一人当たりの取り分は増え、その分、豊かな生活を送れることになる。

「日本では7軒に1軒が空き家だと言われているが、十分に住むことができる家も少なくない。スエーデンなどの北欧でも、30年以上前に空き家問題が生じました。それによって〝ダブルハウジング〟という考え方が浸透した。平日は都市部の家で、週末は郊外の家で過ごすというライフスタイルです」

日本でも普通のサラリーマンが当たり前のように家を2軒持つことが夢ではなくなるという。

詳しくは週刊新潮』2015年4月30日号・巻頭特集:榊洋介記者ご担当)

ベビーブーマー3世が成人
現代社会研究所所長・古田隆彦

2015年には、ベビーブーマー3世(略称:BB3世)の中核が成人になってきます。

BB1世は第二次世界大戦後の1947~49年に毎年約260万人が生まれた世代で、「団塊の世代」ともよばれています。その子ども世代のBB2世は、1971~74年に毎年約200万人が生まれた世代で、「団塊ジュニア」とよぶのが一般的です。

BB3世は、BB1世の孫世代、BB2世の子ども世代にあたり、1994~98年に毎年120万人前後が生まれました。1世や2世に比べて、あまりにも数が少ないため、「BB3世」や「団塊3世」とよぶのをためらう向きもあります。だが、この時期に120万人台の出生数を維持できたのは、やはりベビーブームの残影ですから、そのように名づけてもさしつかえないと思います。

BB3世の性格には、どのような特徴があるのでしょうか。一般に多数世代は、競争が激しい環境で育ちますから、どちらかといえば、しっかりと根性のある、強い性格となりますが、ゆとりがないので遊びや感性には弱くなる。一方、少数世代は、競争が緩やかですから、のんびり、あるいはぼんやりした性格が多くなりますが、ゆとりがあるから遊びや感性には強くなります。

BB3世に当てはめれば、しっかり者が多いものの、遊びや感性にはやや弱いということでしょうか。しかし、1世や2世に比べて、120万人前後という、かなり少ない集団ですから、こうした性向も薄まってきます。

とりわけ、BB3世代は、いわゆる「ゆとり世代」の最後尾にあたり、その分ゆったり傾向が残っています。「ゆとり世代」とは、小中学校で「ゆとり教育」が実施された2002年から、「脱ゆとり教育」に転換された2009年の間に、これらの学校を卒業した子どもたち。狭義では1987~96年に、広義では1987~2001年に生れた人たちですから、BB3世は最後の方に入ります。

彼らの育ってきた時代を、真ん中の1996年生れで振り返ると、0~5歳で「たまごっち」やプレイステーション2を、6~10歳で「千と千尋の神隠し」やニンテンドーDSを、11~15歳でリーマンショックやツイッターを、16歳以降で東日本大震災や消費税8%などと、IT化、経済危機、大天災を経験してきました。

この世代が20歳になると、どのような消費へ向かうのでしょうか。寿命が長くなった昨今、20歳はまだ子どもですから、①自律した消費よりも周りに流される、②ソーシャルメディアに影響される、③対象人口が比較的多いのでムードを作りやすい、などの特徴があります。ファッションでいえば、①少し上の世代に追随する、②ツイッターやラインで情報交換する、③自分の好みと流行を巧みに混ぜ合わせる、といったところでしょうか。

若者市場の新たなトレンドとして、ジーンズ業界も彼らの動きに注目すべきでしょう。

(詳しくは「FASHION VOICE」:カイハラ㈱:80号=1月号

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