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現代社会研究所  RESEARCH INSTITUTE FOR CONTEMPORARY SOCIETY
2016年以前は下欄からどうぞ!

を住みこなす---超高齢社会の居場所づくり』(大月敏雄著・岩波新書) の書評
  現代社会研究所所長・古田隆彦
(詳しくは 北海道新聞(2017年10月22日

物語消費から神話消費へ
現代社会研究所所長・古田隆彦

携帯電話会社のCMで、「白戸家」シリーズ(ソフトバンク)と「三太郎」シリーズ(KDDI)の競り合いが注目を集めている。2007年開始の「白戸家」は、CM好感度1位を7年連続で維持してきたが、14年度以降は「三太郎」に抜かれたままだ(CM総合研究所調べ)。そこで、「白戸家」側も17年の秋から大幅に構成を変えて、巻き返しを図っている。

物語と神話――何が違う
視聴者の関心が「物語(ストーリー)」から「神話(ミソロジー)」へ変わってきているのではないか。物語消費から神話消費への移行である。
「白戸家」は、「お父さん犬」を中心にした一家の動静を細かく描く、典型的な「物語」。これに対し「三太郎」は、日本の昔話を代表する三太郎(桃太郎、金太郎、浦島太郎)が友達となって、さまざまなシーンを展開する、今風の「神話」だ。
物語と神話はどのように違うのか。辞書や事典の見解を整理すると、物語とは、話し手が聞き手に、人物や事件などの流れを語る伝達活動であり、また神話とは、古くから語り継がれてきた宇宙、自然、人間などの関係を、聞き手に解き明かす伝承活動、ということになる。
もう少し一般化すると、物語は、話し手が言葉で結びつけた意味の流れを、社会的な虚構物として聞き手に伝える文章群で、読物、小説、散文、講談、台本などの形をとる。他方、神話は、民族や種族など集団の心の底に潜む、無意識的な世界像を、さまざまな「元型」に仮託して語る文章群で、昔話、民話、お伽話、伝説なども含む。元型(アーキタイプ)というのは、分析心理学者C・G・ユングが定義した普遍的な心像(イメージ)で、仮面、影、老賢者、太母、童子などをいう。
このような違いが、マーケティングに応用されると、表に示したような対比となる。
物語戦略では「差異化」(カラー、デザイン、ネーミング、ブランドなど)の一つとして、「曰く因縁由緒来歴」といった一連の記号(サイン)群を、商品やサービスの上に乗せて、広告効果や販売拡大をねらう。
神話戦略では「差元化」(感覚刺激、無意識自覚、象徴回復など)の一つとして、さまざまな元型をとり入れた象徴(シンボル)の流れを商品やサービスに組み込み、ユーザーの感覚や無意識に訴えかける。
両方とも需要拡大を狙う拡販戦略だが、ユーザーに何を訴えるか、という点で大きく異なる。物語戦略では、供給者が需要者の「欲望」(主に言語的な願望)を刺激して購買へ誘導するが、神話戦略では、需要者の「欲動」(無意識や感覚)を喚起して、需給双方の共感を作りあげる。
もっとも、マーケティング業界の一部では両者を混同して「シンボリック・ストーリー戦略」などと命名する向きもあるが、本質的な違いを無視した、乱暴な議論だろう。

神話型商品で市場再生
昨今の消費市場は大きく変わり始めている。一つは人口減少による需要縮小と方向転換、二つめはデジタルメディアの拡大によるコミュニケーション方式の変質、三つめはグローバル化の限界による国内市場の見直しなどで、生活需要の再評価が求められている。つまり、成長・拡大・外向志向から、飽和・濃密・内向志向への転換である。
このトレンドに供給側が対応するには、デザイン、ブランド、ストーリーに頼る差異化戦略に加えて、五感・六感、シンボル、アーキタイプを駆使する差元化戦略が必要になる。供給者が需要者をリードするだけでなく、両者が対等の立場で濃密な関係を結ぶ手法が求められる。
それゆえ、物語戦略とともに、神話戦略への期待が高まる。アパレル市場でいえば、優れた記号(サイン)を創り出す「デザイン」に加えて、豊かな象徴(シンボル)を生み出す「シンボライズ」が重要になる。斬新・見映え・欧米志向のデザイン型商品だけでなく、懐古・体感・和風志向のシンボライズ型商品にまで、供給網の間口を広げていくということだ。
一例をあげれば、古代衣裳を継承する、女性用の袍(ほう)や裳()、男性用の筒袖や衣褲(きぬばかま)、平安時代の伝統を受け継ぐ、女性用の十二(じゅうに)単衣(ひとえ)や張(はり)(ばかま)、男性用の直垂(ひたたれ)や狩(かり)(ぎぬ)、江戸時代の町人文化に習った、女性用の小袖や前帯、男性用の羽織や股引(ももひき)など。こうした衣裳文化は、私たち日本人の無意識の中に重層的に潜んでいる。それらを丁寧に見つけ出し、巧みに活用して、新たなアパレル商品を生み出してゆく。
すでに日本のファッションブランドでも、「メルシーボークー」の「日本の神話」、「ソウソウ」の「新しい日本文化の創造」、「まとふ」の「日本の眼」、「ビューティフルピープル」の「江戸前トラッド」など、先行的な試みが幾つか始まっている。
この延長線上で差異化と差元化がさらに両立できれば、国内市場の再生はもとより、21世紀後半の世界市場をリードすることもまた不可能ではない。
(詳しくは 繊研新聞・Study Room:2017年12月19日

人口減少社会の逆転ビジネス
現代社会研究所所長・古田隆彦

  • 序.人口はどこまで減るか?
     
  • ●日本の人口は・・・
    ●栃木県の人口は・・・
    ●大田原市の人口は・・・
  • 1.人口減少社会を展望する

  • ●真因は人口容量の飽和化・・・人口減少の直接的原因と本質的要因
  • ●人口波動・日本の推移・・・人間は文明で人口容量を広げる!
  • ●平成享保から新元明天へ・・・農業後波と工業現波を比較する
  • ●明天~化政期の社会動向・・・緊縮と弛緩の繰り返し、江戸型情報化、人口分散の進行
  • ●新元明天の3つの方向・・・飽和・濃縮化、モノゴト産業化、リゾーム化
  • 2.市場戦略が変わる

  • ●人口減少が需要を変える・・・必需品縮小・選択品拡大
  • ●人減市場への基本戦略・・・差別化を解体し差と別に分ける
  • ●必需品を伸ばす6別化戦略・・・別能化・別額化・別数化・別層化・別接化・別業化
  • ●選択品を伸ばす6差化戦略・・・差異化・差元化・差汎化・差延化・差真化・差戯化

  • 3.人減地域を活かす
     
  • ●余剰教員を活かす・・・島留学
  • ●在住者を活かす・・・クラウドソーシング
  • ●廃校を活かす・・・旅館・体験施設、コールセンター、フーズ工場
  • ●空別荘を活かす・・・ダブルハウジング、シェア別荘
  • ●空き家を活かす・・・空き家バンク
  • ●人口減少地域を活かす!・・・ヒト・モノ・土地・人脈を最大限に活かす
  • 4.年齢上昇を活かす

  • ●上昇する年齢構成・・・全国、栃木県、大田原市
  • ●年齢構成の大変化・・・20歳は大人ではない、オトナは25歳から、60歳は何歳か?、高齢者は75歳から
  • ●超中年・超老年を雇用で活かす・・・94歳まで働けるツマ農業、90歳まで現役で働ける企業事例、年齢の上限のない再雇用事例
  • ●超老年を育児に活かす・・・幼老統合ケア施設事例
  • ●超老年資産を子育てに活かす・・・あんしん賃貸支援事業
  • ●超老年の生活市場を広げる・・・移動スーパー、老年者支援タクシー
  • ●老齢者の知能を向上させるIT 教室
  • ●老齢者の体力を維持させる体操教室
  • ●老齢者に娯楽を提供する・・・シニア向けゲームセンター、キャバレー改装デイサービス
  • ●超中年・超老年を活かす!・・・超中年を雇用と消費で活かす、超老年を消費と資産で活かす
  • 5.家族縮小を活かす

  • ●多様化する家族・・・家族構造が変わる、新型家族の登場、栃木県の家族は・・・スーパーファミリー戦略
  • ●シェアハウスの拡大・・・シェアハウスの現在、各地へ広がるシェアハウス、シェアハウスの最先端:6差化戦略
  • ●コレクティブハウスも全国的拡大・・・先行事例
  • ●血縁・地縁を活かす!・・・旧家族・旧地縁を活かす、新家族・新地縁を活かす
  • 結.飽和・濃密のカナメを射止める!
     
  • ●飽和・濃密のカナメを射止める!
  • ●人口減少は避けられない!・・・視野の転換
  • ●マイナス面への順応
  • ●プラス面の積極活用
  • ●飽和・濃密型経営へ
(大田原商工会議所創立70周年記念講演会:2017年9月29日)

SNSがファッションビジネスを変える!
現代社会研究所所長・古田隆彦

SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の急速な拡大で、ファッション市場にもさまざまな影響が出始めています。

SNSはライン、フェースブック、ツイッター、インスタグラムなど、インターネットを利用してユーザーが手軽に情報を発信し、互いに交流できる双方向メディアです。利用者は年々増加して、今年中に国内で7500万人を越え、ほぼ2人に1人が利用する、と予測されています(㈱ICT総研・SNS利用動向に関する調査)。

年代別では、20代が最も高く7割に達していますが、40代で5割、50代で4割、60代で2割と、中高年でも大きく伸びています。利用目的でみると、全体の8割が「知人や友人とのコミュニケーション」、3割が「情報の探索」、2割が「交流の拡大」で使っていますが、「体験の報告」(2割)や「思考や考え方の主張」(1割)も増えてきました(総務省・通信利用動向調査)。

SNSの浸透で、私たち一人ひとりは、新聞・雑誌やテレビといった既成のメディアを通さなくても、独自の情報を自ら発信できるようになりました。マスコミやミニコミとは一味違うパソコミ(パーソナル・コミュニケーション)の出現ともいえるでしょう。

そこで、D・トランプ大統領や橋下徹前大阪府知事など、超著名な政治家でさえ、自分の主張をマスメディアではなく、SNSで発信しています。無名の市民もまた「保育園落ちた日本死ね!!!」とか「#東北でよかった」などと書き込んで、ネット上で〝炎上〟を引き起こし、社会的な関心を集めることに成功しています。

もっとも、誰もチェックしていませんから、「某有名人が死んだ」とか「某国のミサイルが発射された」など、とんでもない虚偽情報やデマも大量に飛び交っています。これにつれて、客観的な事実に目をつむり、感情的な主張のみが罷り通る政治状況も生まれており、「ポスト・トゥルース(脱・真実)」などと懸念されています。

しかし、消費財メーカーにとっては、テレビや新聞を使った広告よりも、最新の情報を提供して需要を喚起できますし、多くのフォロワーを持つ投稿者に自社の商品情報を書き込んでもらえば一気に注目度が上がりますから、SNSを利用しないわけにはいきません。

ファッション産業でも、SNS上で影響力の高い投稿者とアパレルメーカーが手を組んで、服やアクセサリーを開発する事例が相次いでいます。商品の画像をフェースブックに載せて、24時間内に集まった「いいね」の数で製造数を決めたり、インスタグラムでフォロワーの多い女性を専属デザイナーに起用するなどのケースです。

このようにSNSの活用は、ユーザーの需要にじかに接近できたり、密接な情報交換が可能になるなど、大きなメリットがあります。だが、使い方を一歩誤ると、誤情報の拡散、誹謗中傷の炎上、個人情報の流出などのリスクもあります。

活用する企業にとっては、フレッシュなコンテンツをこまめに提供しつつ、ユーザーとの密接な関係構築を通じて、デマや虚偽情報へ的確に対応していくことが求められるでしょう。 


(詳しくは 「FASHION VOICE」:カイハラ㈱:85号=2017.6月号

平成享保」の次の時代を予測する
現代社会研究所所長・古田隆彦

 「平成」という時代が終わろうとしている。明後年に新天皇が即位されると、新たな元号が始まる。「平成」に続く「新元」の時代に、社会・経済やファッションは、どのように変わっていくのだろうか。
「新元明天」へ向かって
「平成」が始まった1989年、筆者は某新聞のコラムで、今後の20年は「成長・拡大の絶頂期であった〝昭和元禄〟にならって、〝平成享保〟とでもよばれることになる」と予測した。「バブル経済からポストバブル経済へ」「放漫財政から緊縮財政へ」「享楽消費から堅実消費へ」と指摘していたが、その後の社会・経済を振り返ると、ほとんどが的中している。
なぜ当たったのか。それは江戸時代の享保期も、現代の平成期も、ともに総人口がピークとなった時代であったからだ。享保期には、当時の社会・経済を支えた農業生産が限界に達し、また平成期には、現代日本を支える加工貿易体制がほぼピークとなった。社会・経済の容量が満杯となると、人口もまた増加から減少へ変わる。それが二つの時代の共通点であった。
生産が伸びず人口も減るというと、暗い時代と思いがちだが必ずしもそうではない。むしろ、ポスト享保の百年間は、同じように人口停滞期であった平安時代とともに、日本型文化が再構築された時代であった。儒学、国学、蘭学が深まる一方、歌舞伎、浮世絵、戯作、俳諧などの町民文化が栄えている。
同じ視点に立って、2000年10月、本欄の前身「繊研教室」にも「成熟文化…平成享保のファッション」を寄稿し、享保期から文化・文政期に到る服飾文化を参考に、今後のファッション市場を展望した。
今や平成の30年が終わって、次の30年が始まろうとしている。人口ピークからダウン定着へと進む時代を、やはり江戸時代と比較してみると、図に示したように、前半は延享~宝暦期に、後半は明和~天明期にほぼ相当している。
延享~宝暦期とは、言語不明瞭な九代将軍徳川家重の通訳として大岡忠光が実権を握った「側用人執政」時代、また明和~天明期は、これまた側用人から出世した田沼意次が、幕政の基礎である石高経済を根本から見直し、重商主義的な財政運営へと転換した「田沼時代」。つまり、前半は人口減少対応への試行錯誤期、後半はそれへの本格的な対応期ということだ。
ここから類推すると、2020年代には人口減少、飽和濃縮型経済への試行錯誤がなおも続く。だが、30年代後半からは、ようやく人口減少に見合った、より大胆な社会・経済政策が展開されることになろう。
新たな元号が未決なので、とりあえず「新元」とよぶと、この時代は明和~天明期に因んで「新元明天」とでも名づけられる。つまり、「平成享保」は「新元明天」へと向かっていく。
和装衣料を再評価する
ファッション市場でいえば、延享~宝暦期は京風・上方文化を脱して、新たに江戸型文化を創り出す模索期であった。
新興商人層の支援を受けた二世市川海老蔵が、歌舞伎「助六」の扮装として、江戸紫の鉢巻、黒羽二重の無地の小袖に紅絹(もみ)(うら)浅葱(あさぎ)の襦袢、綾織の帯、(さめ)(ざや)の刀に桐の下駄という、斬新な拵えを打ち出し、江都の喝采を浴びている。
明和~天明期になると、それらが広く定着し、表面的な華麗さを〝野暮(やぼ)〟とみなし、渋い色、小紋、裏地などの抑えた趣向を〝通〟や〝(いき)〟として尊ぶ、極めて成熟した和装文化が創造された。
女性向けには青紙張りの日傘、花簪(はなかんざし)丁子(ちょうじ)茶色(ちゃいろ)の小袖、藍返しや本染中形(ちゅうがた)の浴衣、鯨帯袖など、また男性向けには夏合羽、表無地裏模様の小袖、丈短の蝙蝠(こうもり)羽織、人形遣い風の長丈羽織など、大人好みの趣向が流行している。
こうした美意識がさらに優れた絹織物や印籠・根付などを生み出し、やがて幕末に欧米へ大量に輸出され、近代日本の経済的基盤を固めていったのだ。
江戸期の変化を先例とすると、今後期待されるのは、従来の成長拡大型や欧米追随型から一歩抜け出し、日本独自の服飾文化を改めて見直す動きではないか。高島田や大銀杏などの髪型を始め、小袖、羽織、法被(はっぴ)半纏(はんてん)、袴、股引(ももひき)、もんぺ、(ふんどし)(きゃ)(はん)、足袋、草鞋(わらじ)など和装文化の再評価である。
すでに袴はガウチョパンツやワイドパンツの変形として伸び始めているし、股引はイージーアンクルパンツやスパッツとして再評価されてきた。褌もその機能を見直されて、新しい下着となりつつある。
この延長線上で、羽織、法被、半纏などのニューアウター衣料や、脚絆や足袋などのニューレッグファッションも、間もなく登場するだろう。
「平成享保」が終わると、社会ムードの濃縮化に伴って、新たな和装ファッションが生み出され、「ハイ・ジャポ(ハイパー・ジャポニズム)」として、広く世界へ発信されていく。
(詳しくは 繊研新聞・Study Room:2017年6月6日

21”ヤングをキャッチする
現代社会研究所所長・古田隆彦

 若い世代の消費離れが進んでいます。総務省の家計調査によると、1999年から2014年の15年間に、30歳未満の消費支出は14.6%も減少しています。
一方、貯蓄率は15.7%から30.9%へほぼ2倍となりました。幼い時からデフレ経済の下で育ってきた彼らは、社会保障への不安などから貯蓄に走るのでしょう。
モノヘの消費も減っていますか、スマホの普及は約7割に高まり、SNS(交流サイト)はもとより、コンサート、イベント、旅行などのコト消費は増えています。今後、ヤングの消費行動はどうなっていくのでしょうか。
この世代にはすでにミレニアル世代、ゆとり世代、さとり世代など、さまざまな名前がつけられ、その特性が指摘されています。
最も広い定義が米国生まれの『ミレニアル世代』で、「千年紀(Millennial)」に因んで、1980年から2000年前後までの約20年間に生まれた人たちです。幼少期からデジタル環境の中で育ち、日常的にインターネットを使いこなしているため、上の世代とは異なる価値観やライフスタイルを持っている.といわれています。
「ゆとり世代」は、日本の小中孚校で『ゆとり教育』を受けた、1987~96年生まれの若者たちで、競争よりも余裕を求める傾向があるようです。一番狭い「さとり世代」は、概ね1990年代生まれで、バブル経済崩壊後の不況の中で、インターネットを利用して育ち、無駄な努力や衝突を避けて、大きな夢や高望みはしない若者たちです。
いずれも2000年以前の生まれで、2017年には17歳以上になります。だが、同年には01年生まれが16歳となり、それ以下がヤング市場の下半分を占めることになります。彼らは人ロピークの1億2800万人が近づく時代に、それまでの120万人台から110~100万人台へと急減した世代です。とすれば、21世紀生まれの若者たち、「21ヤング」とよぶべきかもしれません。
一般的にいえば、沢山生まれた多数世代では競争か激しいため、しっかり者か多くなりますが、余裕がないから新しい文化や消費を創り出す能力が弱いようです。他方、少なく生まれた少数世代では競争が少ないから、ぼんやり者が多くなりますが、ゆとりがあるからユニークな文化や消費を創り出す能力が高まります。
30歳未満でも、17歳以上はやや多数世代ですか、16歳以下では少数世代の特性が急速に強まってきます。そうなると、21ヤングが高校を卒業し、大学生や社会人になる2019年以降には、人口減少時代にふさわしい、新たなライフスタイルを生み出す可能性が高まってきます。

それは多分、ゆとり活用、体感重視、カスタマイズ(個別仕様)などをキーワードとする、斬新な方向です。これらをうまくキャッチできれば、新たなヤング市場を創り出す、絶好のチャンスとなるでしょう。

(詳しくは 「FASHION VOICE」:カイハラ㈱:84号=2017.1月号

平成享保の先は・・・縮小社会へ向かうのではなく、濃密社会へ向かう
現代社会研究所所長・古田隆彦

人口が減少= 縮小ではなく濃密と捉える
●人口減少社会は、悪い意味でシュリンキング(shrinking:縮小)といわれているが、そうではなくコンデンンシング(Condensing:濃密)だ。縮小社会ではなく濃密社会に向かっていく。
●東京オリンピック後の2021年から東京の人口が一挙に減少し始めると、ようやく日本全体が人口減少に慣れた社会へと向かい始める。東京ブランド、東京価値といったものから、 地元の地域への愛着や、自分自身でいかにモノを自分自身でいかにモノをつくり出すかという「私的効用」に向かっていく。
●東京ではない地方都市から、新しいライフスタイルが生まれてくるので、今からその準備をしていく必要がある。

江戸時代との構造類似から今後の日本を推測する
●日本は2008年の人口1億2,800万人をピークに飽和期から縮小期に入った。人口が増えている時代しか知らない者にとって、人口が減っていく社会の有り様は未知の世界だ。
●しかし、日本は何度も人口減少を経験してきた。直近の人口減少時代は江戸時代中後期。江戸時代は農業社会、現代は工業社と中心産業は異なるが、人口がピークになった社会から落ちていく社会へと向かう時には、同じような社会構造が現れる。
●人口が拡大→飽和→縮小した江戸時代の背景・文化・消費傾向などを踏まえると、今後の日本の動向が多角的に推測できる。
●ピークとなった時期は享保という8代将軍吉宗の時代。「米価安」というデフレ対策に吉宗は散々失敗し、担当老中を辞めさせた。
●吉宗が失敗した後、新たに政権を担ったのが田沼意次。彼は勃興する商業経済を中心とする幕政へと転換していった。
●現代もまた工業・製造業中心の社会・経済の仕組みが限界に来ているから、やがて次なる社会と経済の仕組みを考える人間が、新たなリーダーとして頭角を現してくるだろう。
●今はまだ次なるものが見えていない過渡期ではあるが、2016年の象徴的な出来事として、イギリスのEU脱退、女性都知事の誕生、トランプ氏の圧勝を見ても、ある意味で市場主義社会がピークに達しており、世界的にも時代の大きな変わり目にあることが読み取れる。
●一方で、人口減少とは本来あるべき姿に向かっていくということ。江戸時代も人口は減り続けたが、その間に社会・経済は成熟し、江戸文化(歌舞伎や浮世絵、絹織物や漆器、細工物など)が爛熟した。現代も、日本独自のカルチャーや情報文化が発信され、和風や日本伝統の見直しなどその兆候はすでに見えており、ますます濃密化の傾向を強めていくだろう。

選択品の需要を喚起する
●人口の減る社会で一番注目すべきは、必需品の総量が減ること。食べ物、着る物、住む所、これらは人間の数に比例するため需要自体が必ず減っていく。これが人口減少社会マーケットの基本である。
●そこで、減ることを逆にどう生かすかが喫緊の課題になる。その方法の一つが選択品の需要喚起。人間の基本的な生活願望には7つがあるから、それぞれを満たすための展開方法「7差化戦略」を考えなければならない。今までの商品開発では、機能的な違いによる差別化やビジュアル的な違いによる差異化に、あまりにも偏り過ぎてきたのではないか。
●商品創りでネウチ観を変えるには、生活者の願望に対してこれまでとは異なる対応が必要になる。 デフレ経済が定着してくると、工業製品は間違いなく安くなっていく。その代わりに非工業製品が高くなる。江戸時代の 「諸色高(さまざまな物の値が上がる) 」に習えば、どのような諸色が上がるのか 何が高価になってくるかという見通しが、これからの新しいターゲットになる。
●これを的確に捉えるには、一方では大きな人口の流れ、もう一方ではもっと細かい人間の心の動き、つまりマクロの問題とミクロの問題の、両面を絶えず見ておかなければならない。

(詳しくは 伊藤忠ファッションシステム㈱『フュ―チャーアスペクト・日常3.0』:2017年1月号)

「PPAP型ブランド」に注目!
現代社会研究所所長・古田隆彦

① PPAP型ブランド・・・


ピコ太郎がユーチューブに投稿した 「ペンパイナッポーアッポーペン」は、全世界の再生回数が3力月で2億回を突破し、発信者を一躍有名アーティストにした。PPAP型ブランドとはピコ太郎の衣装をいうのではなく、ほとんど無名のアバレルメーカーがSNSサービスを活用して、新たな流行を創りだすであろうニューブランド。

② 業界への期待・・・

アパレル企業にも、 最先端メディアを大胆に応用し、自社製品を積極的に訴求する挑戦が期待される。

(詳しくは 繊研新聞「2017年・注目のモノ・コト:,2017年1月10日)

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